- 著者
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楊 韜
- 出版者
- 情報文化学会
- 雑誌
- 情報文化学会誌 (ISSN:13406531)
- 巻号頁・発行日
- vol.16, no.2, pp.44-51, 2009-12-03
本稿では,中国におけるブログ文化の全体的状況及び,ブログと既存メディアとの関係を,統計データと事例分析の両方を通じて考察した。2007年末に,中国のブログ利用者数は,4698.2万人にのぼった。ブログの内容について,個人の感情や日常生活を記録するものが多いなか,社会現象などへの主張を表すものも少なくない。事例として,「紫禁城スターバックス事件」を取り上げ,新興メディアとしてのブログと既存メディアの関係を検討しうえ,中国におけるブログの特徴を考察した。〓成剛のブログ文章は,中国伝統文化の保護と外国商業資本との関係をめぐって議論を惹き起こした。外国メディアは,〓成剛の主張と中国政府の姿勢が一致していると強調しているけれども,『人民日報』の掲載文から異なる一面が見えたように,同じ社会現象に対するブログ(個人)と既存メディア(国家)の間でズレが生じた。このようなズレが生じた原因は個人による発信というブログの本質的な機能と中国の特殊なメディア環境の両方にある。また,公人/私人の境界の曖昧さが顕著となっている点は中国のブログの-特徴である。最後に,中国のブログにおける「エリートブログ」の主導傾向と「草の根ブログ」の弱体化という問題点に注目した。