著者
熊井 将太
出版者
日本教育方法学会
雑誌
教育方法学研究 (ISSN:03859746)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.73-84, 2009

本稿の目的は,16世紀から17世紀にかけての学級教授の成立過程を歴史的に検討し,学級教授がどのような構造を持ち,どのような変容を経て成立していったかを明らかにすることである。本稿では,学級教授の起源を巡る議論を出発点として,(1)イエズス会学校における学級の実態的発展,(2)近代教授学の先駆者ラトケ(Ratke,W.)の学級教授の構想,および(3)コメニウス(Comenius,J.A.)の学級教授の構想,という三点から学級のもつ意味を検討した。16世紀末のヨーロッパにおいて,学級という組織は実態的には,経済性・効率性の観点および生徒の管理という観点から要請されて現れてきた。17世紀になると,それ以前の特権階級に独占された教育を批判し,すべての人間の知識,能力をもれなく高める,合理的な教授方法を求める教授学運動が生じてくる。その動向の中で,ラトケは,教師中心的な一斉授業として学級教授を基礎づけた。それに対して,コメニウスは,集団で学ぶことが生徒の能動性を高め,その知的,実践的な能力を育てることを看取した。コメニウスは学級を経済性・効率性の論理だけでなく,教育の論理からも捉え直したのである。コメニウスにおいて,学級の教育的意義が認められ,学級教授の思想が準備されたと言える。

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