著者
竹林秀晃 宮本 謙三 宮本 祥子 宅間 豊 井上 佳和 岡部 孝生
出版者
土佐リハビリテーションカレッジ
雑誌
土佐リハビリテーションジャーナル (ISSN:13479261)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.33-40, 2002
被引用文献数
1

両側同時筋出力の発揮は,片側のみの筋出力発揮に比べ数〜20%程度低下することが報告されており,両側性機能低下(bilateral deficit)として知られている。本研究の目的は,等速性運動機器を使用して角速度と筋収縮様式を変化させてのbilateral deficitへの影響を筋電図学的に検討を行なうことである。対象は,健常男性6名とした。方法は(1)一側性収縮 (2)両側同名筋同収縮 (3)両側同時同名筋異収縮 (4)両側同時拮抗筋異収縮にて,膝関節伸筋の等尺性収縮・CON・ECCを組み合わせて行なった。収縮各肢位のCON・ECCは,角速度30・90・180度/secで行った。測定には,表面筋電計とCYBEXを用いて測定した。結果は,右VM・RF・VLのおいて左膝関節90度屈曲位での膝関節伸筋等尺性収縮時の右膝伸筋ECC(角速度180度/sec)の際に有意な%IEMGの低下が認められた。また,左VM・RF・VLのおいては,膝関節伸筋等尺性収縮時の右膝関節伸筋ECC(角速度30・90度/sec)時の左膝関節90度屈曲位での膝関節伸筋等尺性収縮の際に有意な%IEMGの低下が認められた。過去の報告におけるbilateral deficitのメカニズムは,脊髄・末梢性レベルの (1)二重相反神経支配(2)両側同時発揮時に抑制されるmotor unitの特性,心理学レベルの(3)注意の分割,中枢性レベルの(4)大脳半球間抑制 (5)大脳半球内抑制などの仮説が提唱されているが,いまだ明確なものは提示されていない。今回の結果からは,二重相反神経支配を意識した方法(4)両側同時拮抗筋異収縮において方法(3)両側同時同名筋異収縮より%IEMGが高くなる傾向はあるものの統計学的に差がないことや周波数解析による%MPFにおいても有意な差がないことから脊髄・末梢性レベルの影響は少なく,日常経験の少ない筋出力より外力が打ち勝つECCの際の左VM・RF・VLに有意な%IEMGを来していることから心理学レベルの影響が大きいと思われた。メカニズムに関しては,いまだ不明な点も多く前述したメカニズムが動作方法の種類により複雑に絡み合った運動制御結果と考えられる。

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