著者
滝本 幸治 竹林 秀晃 奥田 教宏 宅間 豊 井上 佳和 宮本 祥子 岡部 孝生 宮本 謙三
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11156, (Released:2017-03-31)
参考文献数
24

【目的】Walking Stroop Carpet(以下,WSC)課題による転倒リスク評価の有用性について検討することを研究目的とした。【方法】対象は地域在住高齢者で,転倒群30 名と非転倒群70 名とした。WSC は,5 m の歩行路に「赤色」「青色」「黄色」「緑色」と書かれたターゲットを横4 列×縦10 列に配置したもので,ターゲットの文字は異なる色彩で印刷されており,文字と色彩は一致しない。WSC 課題は3 条件実施され,たとえば色条件では指示した色彩のみを選択し踏み歩くことが求められ,所要時間を計測した。【結果】WSC 課題(色条件)は,転倒群の所要時間が有意に遅延しており,ロジスティック回帰分析の結果,色条件のみが転倒を説明する変数として抽出された(オッズ比1.62,95% 信頼区間=1.00–2.60)。【結語】WSC 課題(色条件)は,転倒リスク評価に利用可能であることが示唆された。
著者
井上 佳和 宮本 謙三 宅間 豊 宮本 祥子 竹林 秀晃 岡部 孝生
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.55, 2003 (Released:2004-03-19)

【はじめに】 長年,健康づくりのための運動指針の中で奨励される運動は有酸素性トレーニングであったが,ここ数年,レジスタンストレーニングとの併用が奨励されるようになった。それぞれのトレーニングの方法論や効果についての報告は多い。しかしエネルギー供給系の異なる2種の運動を併用した際のトレーニング効果についての報告は少なく,明確な知見は得られていない。そこで本研究では有酸素性トレーニング単独実施時とレジスタンストレーニングを併用して実施した際のトレーニング効果について検討を行なった。【対象と方法】 対象は運動習慣を持たない成人男性17名とした。この対象者を有酸素性トレーニングのみを実施する群(AT群),レジスタンストレーニングを併用して実施する群(ART群),トレーニングを実施しない群(C群)に分けAT群とART群に対しては週3回,5週間のトレーニングを実施した。内容は有酸素性トレーニングとして50%V(dot)O2max負荷量での自転車エルゴメーター駆動20分,レジスタンストレーニングとして100deg/secの等速性膝伸展運動30回であった。測定項目はPeak V(dot)O2,膝伸展筋力の2項目とし,各群のトレーニング前後の値をt検定にかけることでトレーニングによる効果を判定した。有意水準は5%とした。【結果】 AT群では2項目共に増加したが,有意な増加が認められたのは膝伸展筋力のみであった。ART群ではPeak V(dot)O2,膝伸展筋力共に有意な増加が認められた。C群では,すべてに有意差が認められなかった。【考察】 レジスタンストレーニングによるPeak V(dot)O2の増加は,筋の酸素利用能力の改善に起因すると考えられた。筋の酸素利用能力の改善は,酸素拡散能力と酸素消費能力により規定されるがART群では有酸素性トレーニングによる筋毛細血管の発達が酸素拡散能力を向上させ,レジスタンストレーニングによる速筋内でのFOGへのサブタイプの移行が,ミトコンドリア量と酸化酵素活性を高め,酸素消費能力を向上させたと推察された。今回の結果をふまえると,有酸素的作業能の代表的指標であるPeak V(dot)O2を増加させるためには,有酸素性トレーニングのみならず,レジスタンストレーニングを併せて実施する方が,より大きな効果が期待できる可能性が示唆された。膝伸展筋力については,対象を日常運動習慣を持たない一般成人とした場合,自転車駆動などの運動によっても改善を認めることが明らかとなった。しかしペダル負荷量から考えると,活動が高まる筋線維は遅筋が中心になると考えられることから,速筋線維の活動を高めるレジスタンス運動を加えることで,バランスのとれた筋機能への刺激となり得ると考えられた。
著者
竹林 秀晃 宮本 謙三 宅間 豊 井上 佳和 宮本 祥子 岡部 孝生 滝本 幸治 八木 文雄
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.82-87, 2006-04-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
26
被引用文献数
2

筋力評価や筋力トレーニングは,徒手筋力検査法や等速度運動機器など,一側を対象として行われることが多い。しかし,身体運動の多くは,左右の四肢を非常に巧みに協応させて行われており,左右肢間の相互作用を考慮した両側性運動を考慮する視点も必要と思われる。本研究では,一側に筋力調節課題を与えることで注意の方向を統一し,その調節水準を変化させることによる対側との相互干渉の変化を,下肢運動課題を用いて検討した。対象は健常成人9名とし,運動課題には右膝伸展筋筋力の筋力調節下(等尺性収縮による100%最大随意収縮 : Maximal Voluntary Contraction(MVC),75%MVC,50%MVC,25%MVC)で,対側である左膝伸展最大等尺性筋力を発揮するという両側性運動を用いた。加えて,左側単独での膝伸展最大等尺性筋力も測定した。測定に際しては右膝伸展筋力の調整量保持を絶対条件とし,注意の方向性を統一した。データ分析対象は,各運動課題遂行時の左膝伸展最大筋力の変化とした。その結果,右膝伸展筋力を調整することによる左膝伸展最大筋力への影響は,右膝伸展筋力の調節水準が低くなるに従い,左膝伸展最大筋力も同様に低下するという同調的変化を示した。これは,両側性機能低下のメカニズムの一つである認知・心理レベルでの注意の分割が関与しており,神経支配比が大きい下肢筋での筋力調節の要求は,課題の難易度が高く,運動の精度を高めるためより多くの注意が必要性であるため,左膝伸展最大筋力が低下したと考えられる。
著者
佐々木 誓子 岡部 孝生 岡田 耕平
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.E1104, 2007

【はじめに】<BR> 本邦における脳卒中患者の平均復職率は約30%とされる。しかし、脳卒中患者の復職率は、地域により社会情勢及び医療状況が異なるため、国別はもちろん国内においても地域格差がある。そこで今回、当院における復職状況を把握することを目的にアンケート調査とカルテより後方視的に調査を行った。<BR>【対象】<BR> 対象は2001年1月~2005年12月までの過去5年間に当院を退院した脳卒中患者のうち、退院時年齢が60歳以下の256名(男性187名、女性69名、年齢は53.0±6.1歳)とした。<BR>【方法】<BR> まず、予め作成した調査用紙を用いて復職に関するアンケート調査を郵送法により行った。次に、対象者の入院カルテより1)診断名、2)障害側、3)Brunnstrom stsge(Br-Stage:下肢)、4)感覚障害の有無(下肢)、5) 高次脳機能障害の有無、6)歩行自立度(屋内)、7)Barthel index(BI) の7項目について抽出した。なお、今回は各項目とも退院時のものを採択した。アンケート回収後、対象者を復職群と非復職群の2群に分け、前述 した7項目について、カイ2乗検定、対応のないT検定を用い比較検討した。<BR>【結果】<BR> 有効回答数は114名(有効回答率=46%)であった。その中で、発症前に就労していなかった者12名を除外した102名中の復職者は43名(42%)であった。まず、1)診断名は復職群が脳出血20名、脳梗塞26名、クモ膜下出血4名、非復職群は脳出血37名、脳梗塞26名、クモ膜下出血8名となり有意差は認めなかった。2)障害側は、復職群が右片麻痺17名、左片麻痺20名、その他5名、非復職群は右片麻痺24名、左片麻痺24名、その他12名となり有意差は認めなかった。3)Br-stageは、復職群がI・II 2名(5%)、III・IV 6名(14%)、V・VI 34名(81%)、非復職群はI・II 5名(8%)、III・IV 35名(58%)、V・VI 20名(33%)となり有意差を認めた(p<.05)。4)感覚障害は、復職群が正常23名、鈍麻19名、脱失0名、不明0名、非復職群は正常22名、鈍麻33名、脱失1名、不明4名と有意差は認めなかった。5)高次脳機能障害は復職群で高次脳障害を認めた者6名(14%)、認めなかった者36名(86%)、非復職群で認めた者33名(55%)、認めなかった者27名(45%)となり有意差を認めた(p<.01)。6)歩行自立度は復職群自立40名、介助2名、非復職群自立46名、介助14名となり退院時に有意差は認めなかった。7)BIに関して復職群は98.0±6.2点、非復職群87.8±22.5点となり有意差を認めた(p<.01)。<BR>【考察】<BR> 今回の結果は脳卒中患者の復職率が42%と、本邦の平均値より高い結果であった。復職に至ったものは、身体機能面はもちろん移動だけでなく日常生活動作等の能力面においても能力が高い者が復職していることが考えられた。<BR>
著者
宮本謙三 竹林 秀晃 島村 千春 宮本 祥子 宅間 豊 井上 佳和 岡部 孝生
出版者
土佐リハビリテーションカレッジ
雑誌
土佐リハビリテーションジャーナル (ISSN:13479261)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.25-29, 2004
被引用文献数
2

介護予防を目的とする様々な取り組みが行われている。高知県香我美町においても平成15年度より県のモデル事業として,高齢者健診による虚弱高齢者の把握と運動教室を開催している。運動教室の成果は費用対効果の観点から評価されることが多いが,運動プログラムの適否を検討するためには身体機能の変化を指標とした評価が不可欠である。今回我々は,平成15年度に実施した運動教室について,3ヶ月間22回の運動教室の前後で運動機能を比較検しその効果を検証した。測定項目は(1)握力,(2)膝伸展筋力(HHD),(3)開眼片脚立ち時間,(4)閉眼片脚立ち時間,(5)長坐体前屈,(6)Up & Go,(7)10m歩行時間の計7項目とした。参加人数は21名で,運動内容はストレッチングと軽い筋力トレーニングを中心に約1時間程度のものである。結果は長坐体前屈と10m歩行時間において改善が認められ,運動内容を反映した一定の効果が得られたものと思われた。そしてこの運動教室は,事業終了後も参加者の自主開催により継続されている。介護予防の取り組みは対象者に継続的な運動習慣を根付かせ,地域全体の健康意識の高まりを促すものでなければならない。今後は,教室の集団構成のあり方を吟味し,集団の機能水準に見合った運動内容を整理すると同時に,機能維持のためのシステム構築を検討することが必要である。
著者
滝本 幸治 宮本 謙三 竹林 秀晃 井上 佳和 宅間 豊 宮本 祥子 岡部 孝生
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.281-285, 2009-04-20
参考文献数
22
被引用文献数
4 2

[目的]地域の職能を有した人材資源を有効に活用した介護予防事業において,過去4年間に我々が介入してきた運動教室の効果検証を行った。[対象]過去4年間の運動教室参加者95名(平均年齢77.8±6.1歳,男性20名,女性75名)である。[方法]体力の総合的効果を検証できるよう,運動教室実施前後の体力測定値を得点化し,総合得点により比較した。得点化には,同市の高齢者健診の結果から作成した体力標準値を利用した。また,運動教室による効果の要因を検討するために,運動教室による効果あり群と効果なし群に分類し,運動教室開始時の体力を比較した。[結果]運動教室の前後で総合得点の有意な向上を認めた。また,効果あり群の教室開始時の総合得点が有意に低く,運動教室開始時の体力水準が低い者に運動効果があったと推察された。[結語]地域に根ざした高齢者運動教室の効果が認められたが,体力水準が低く且つ類似した体力の対象者を選定することによって,より有効な運動教室の運営が可能になることが考えられた。<br>
著者
宮本 謙三 竹林 秀晃 宅間 豊 井上 佳和 宮本 祥子 岡部 孝生 坂上 昇 森岡 周 舟橋 明男
出版者
土佐リハビリテーションカレッジ
雑誌
土佐リハビリテーションジャーナル (ISSN:13479261)
巻号頁・発行日
no.1, pp.27-32, 2002-12-20

本研究の目的は一側の筋力トレーニングが対側に及ぼす筋力増強効果, すなわち筋力の両側性転移を検証することである。対象は健康な男子学生22名とし, 方法は被験者を等張性収縮によるトレーニンググループと等尺性収縮によるトレーニンググループに分け, 一側の膝伸展筋に対し,4週間(延べ16日間)の筋力トレーニングを行った。そして, トレーニング前後の対側同名筋(膝伸展筋)と対側拮抗筋(膝屈曲筋)の等尺性筋力の変化を筋力測定装置を用いて測定した。結果は, 対側拮抗筋筋に筋力増強効果を認め, 対側同名筋には認められなかった(p>0.05)。また, 等張性トレーニングと等尺性トレーニングの間に差は認められなかった。これらの変化は, 最大出力を発揮するための相反運動あるいは姿勢固定作用と思われ, 筋力トレーニングにおける両側性転移効果を確認することは出来なかった。
著者
竹林 秀晃 弘井 鈴乃 滝本 幸治 宮本 謙三 宅間 豊 井上 佳和 宮本 祥子 岡部 孝生
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48100757, 2013 (Released:2013-06-20)

【目的】近年,身体保持感や運動主体感などの自己身体感覚の研究において,視覚と体性感覚が時間的・空間的に一致することによりラバーハンド錯覚や体外離脱体験などの現象が引き起こされることが報告されている.一方,慢性疼痛の原因は,視覚情報と体性感覚情報の不一致が疼痛の原因となることが報告されている.そして治療として,鏡,ビデオ映像やVR 技術などを使用し,視覚と体性感覚のマッチングが有効であるとの報告がある.こうしたことから,自己身体を正確に認識するためには,様々な感覚モダリティの情報を統合することが必要である.しかし,姿勢制御において視覚刺激と身体情報の一致・不一致性についての報告は少ない.視覚情報と身体感覚情報(体性感覚,前庭覚)が一致しなければ,身体の違和感が起こり姿勢制御能力の低下やパフォーマンスがうまくできなくなる可能性がある.そこで,今回リアルタイムに視覚情報を変化させることで身体感覚情報との不一致をつくり,姿勢制御への影響を探ることを目的とした.【方法】対象は,健常成人18 名(年齢21.9 ± 0.4 歳)とした.測定肢位は,Head Mounted Display; HMD(HMZ-T2,SONY社製)を装着したタンデム肢位とした.HMDとデジタルビデオカメラ(HDR-CX270V,SONY社製)を同期化させ,被験者自身の後方から撮影した映像をリアルタイムにHMDに映写した.映像としてカメラを前額面上で右回転させ,設定角度は0°・45°・90°・135°・180°の5 つをランダムに映写した.測定時間は各30 秒とし,15 秒で設定角度へと傾け,15 秒で0°へと戻した.データは,重心動揺計(アニマ社製)にて,サンプリング周波数50HzでPCに取り込み,総軌跡長,矩形面積を算出した.統計学的解析は,一元配置分散分析と多重比較検定(Bonferroni法)を用いた.また,測定後,測定時の主観的感覚を聴取した.【倫理的配慮,説明と同意】実験プロトコルは,非侵襲的であり,施設内倫理委員会の承認を得た.なお,対象者には,研究の趣旨を説明し,同意を得た.【結果】総軌跡長は,映像の回転角度180°において,回転角度0°より有意に高値を示した (p<0.01) .矩形面積は,回転角度135°と180°において回転角度0°より有意に高値を示した (p<0.01) .被験者からの主観的感覚の回答としては,「映像に抵抗しようと傾きと反対方向に傾いてしまう」などの映写された自己身体像に対して没入感があったことが窺える回答が得られた.【考察】立位姿勢保持では,視覚・体性感覚・前庭覚の情報が統合されて成り立つが,視覚情報による影響が大きい.しかし通常,自身の姿勢を視覚的に取得することは困難であり,本研究のように自己身体の後方からの映像は非日常的である.さらに,リアルタイムに映写する身体像を回転させることで,視覚情報に外乱刺激を与え,身体感覚情報との不一致の状況のみならず,遠心性コピーとの不一致も与えることになる.結果として回転角度が大きい場合において有意に重心動揺が大きくなった.これは,視覚情報と身体感覚情報の不一致の度合いが大きく,身体図式との整合性が合わず姿勢制御に影響を及ぼしたことを示唆している.これは,Mental Rotation課題において実際動かすことが難しい120°,240°に回転させた手の写真に対する反応時間が延長する報告やBiological Motionにおいて180°回転させた時には、運動の認知が低下する報告と同様なものと考えられる.日常見る機会の少ない角度の視覚情報であるため,視覚映像としての経験的要素が少なく身体図式が形成されていないためと考えられる.また,各回転角度が増大するにつれて回転角速度が速くなることが姿勢制御に影響を与えたことも考えられる.一方,回転角度が少ない場合は,日常経験可能な角度であることから身体図式の形成がされており,映写された身体像との不一致があっても,感覚の重みづけの変化がおこり,視覚情報よりも他の身体感覚情報がより賦活されている可能性や予測的側面により重心動揺を制御できる可能性を示唆している.【理学療法学研究としての意義】姿勢制御において,視覚操作や視覚と身体感覚の一致性に着目する必要がある.視覚情報と身体感覚情報との不一致の状況では,感覚の重みづけの変化により体性感覚など自己身体へのアプローチを閉眼という環境以外で与えることが出来ると考えられ,新たな姿勢制御戦略や視覚や身体感覚情報の統合障害がある場合での評価やトレーニングにつながる可能性があると考えている.
著者
竹林秀晃 宮本 謙三 宮本 祥子 宅間 豊 井上 佳和 岡部 孝生
出版者
土佐リハビリテーションカレッジ
雑誌
土佐リハビリテーションジャーナル (ISSN:13479261)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.33-40, 2002
被引用文献数
1

両側同時筋出力の発揮は,片側のみの筋出力発揮に比べ数〜20%程度低下することが報告されており,両側性機能低下(bilateral deficit)として知られている。本研究の目的は,等速性運動機器を使用して角速度と筋収縮様式を変化させてのbilateral deficitへの影響を筋電図学的に検討を行なうことである。対象は,健常男性6名とした。方法は(1)一側性収縮 (2)両側同名筋同収縮 (3)両側同時同名筋異収縮 (4)両側同時拮抗筋異収縮にて,膝関節伸筋の等尺性収縮・CON・ECCを組み合わせて行なった。収縮各肢位のCON・ECCは,角速度30・90・180度/secで行った。測定には,表面筋電計とCYBEXを用いて測定した。結果は,右VM・RF・VLのおいて左膝関節90度屈曲位での膝関節伸筋等尺性収縮時の右膝伸筋ECC(角速度180度/sec)の際に有意な%IEMGの低下が認められた。また,左VM・RF・VLのおいては,膝関節伸筋等尺性収縮時の右膝関節伸筋ECC(角速度30・90度/sec)時の左膝関節90度屈曲位での膝関節伸筋等尺性収縮の際に有意な%IEMGの低下が認められた。過去の報告におけるbilateral deficitのメカニズムは,脊髄・末梢性レベルの (1)二重相反神経支配(2)両側同時発揮時に抑制されるmotor unitの特性,心理学レベルの(3)注意の分割,中枢性レベルの(4)大脳半球間抑制 (5)大脳半球内抑制などの仮説が提唱されているが,いまだ明確なものは提示されていない。今回の結果からは,二重相反神経支配を意識した方法(4)両側同時拮抗筋異収縮において方法(3)両側同時同名筋異収縮より%IEMGが高くなる傾向はあるものの統計学的に差がないことや周波数解析による%MPFにおいても有意な差がないことから脊髄・末梢性レベルの影響は少なく,日常経験の少ない筋出力より外力が打ち勝つECCの際の左VM・RF・VLに有意な%IEMGを来していることから心理学レベルの影響が大きいと思われた。メカニズムに関しては,いまだ不明な点も多く前述したメカニズムが動作方法の種類により複雑に絡み合った運動制御結果と考えられる。