著者
嶋崎 隆
出版者
一橋大学
雑誌
一橋社会科学 (ISSN:18814956)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-48, 2008-06

本論は、哲学の立場から、私が「エコフィロソフィー」と名づける分野に関して、そこにそもそも原理的に、どういう基本課題なり問題領域が設定される必要があるのかをできるかぎり総合的に検討するものである。すでにこの新しい哲学分野では、日本内外でかなりの蓄積が見られるといえよう。たしかに、エコロジーの各流派を扱ったものとか、環境倫理に焦点を当てた研究は豊富に存在する。だがそれでも、そもそも全体としてエコフィロソフィーがいかなる諸課題を担う必要があるのかについて、幅広く検討されたことはあまりなかったと考えられる。各研究者・各運動家は、自分の興味・関心から問題を提起するわけであるが、それがエコフィロソフィーのどの分野に該当するのか、などを自覚して展開することは意外と少ないと思われる。本論はまず前段として、地球規模の環境問題への対応の困難さについて予備的考察をおこなう。さらに具体的に地球温暖化問題を中心に、自然環境の問題が地球規模で広がってきていることを紹介・検討する。すでにこのなかで、私のエコフィロソフィーのスタンスがある程度明らかになるだろう。以上が前半部分であるが、こうした状況認識を踏まえて、エコフィロソフィーの四つの分野の究明をその基本課題と定めて、そこでどういう問題が、従来の哲学と比べて新しく登場してきたのかを紹介・検討したい。エコフィロソフィーの分野として、第一に自然哲学と狭義のエコロジー、自然科学の分野が考えられ、第二に環境倫理における多様な議論が考察される。さらに第三に、経済現象を中心に、環境問題を社会批判・社会認識との関連で考察する。そして第四に、エコロジカルなライフスタイルの形成の問題を、生活文化を背景に展開したい。以上四つの分野で、エコフィロソフィーの課題は尽くされているように考えられる。

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