著者
佐藤 紘光 齋藤 正章
出版者
日本管理会計学会
雑誌
管理会計学 : ⽇本管理会計学会誌 : 経営管理のための総合雑誌 (ISSN:09187863)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.61-79, 1995

<p>本稿では,経営者と管理者の間の情報伝達に焦点を当て,エイジェンシー・モデルに基づいてその経済的価値を分析する.管理者が実行した行動の結果は,管理会計が測定する業績情報に集約され,これを報告するという形式で経営者に伝達される.それがリスク・シェアリングと動機づけに果たす役割については,これまでのエイジェンシー研究が明らかにしたところであり,業績情報の伝達が経済的価値をもつことについては異論がない.</p><p>経営者と管理者の間で伝達される情報には,会計報告のような事後情報だけでなく,有用であれば,事前情報も含まれるであろう.たとえば,契約を締結する前段階において、環境条件や生産性についての両者の認識にギャップが存在するのは珍しいことではない.そうした認識の相違は、契約条件,すなわち,業績評価(成果配分)ルールに重要な影響を及ぼすはずであるから,このギャップを埋めるために相互に意志疎通を図る場が用意されるであろう.予算ないし業績目標の決定に管理者の私的情報を反映すべく,決定過程へ管理者の参加を求めるのは,その一例である.本稿は,そうした事前情報の伝達に経済的価値があるか否かを分析する.したがって,本研究は参加の有効性に関する検証とみることもできる.</p><p>論文の構成は以下の通りである.第2節では基本モデルとして,情報伝達を要求しないモデル(PROGRAM 1)と要求するモデル(PROGRAM 2)を提示し,同時に情報レントという概念を導入する.第3節では数値例を用いて情報伝達の経済的価値を測定し,それが価値をもつ場合ともたない場合を明らかにする.第4節では情報伝達の価値の有無を決定づける要因を一般式を用いて検証する.</p>

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