著者
藤井 伸二
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.57-69, 1999-06-25
被引用文献数
12

絶滅危惧植物の生育環境別の危険度を「高危険度率」(「絶滅」,「絶滅?」もしくは「絶滅寸前」と判定された種類数の合計がレッドリストの掲載種類数に占める割合を各生育環境別に算出したもの)にもとづいて考察した.その結果,水湿地環境と草地環境で高危険度率が高く,森林環境と岩石地環境で低いことが明らかになった.また,レッドリスト掲載種(亜種,変種等を含む)の多さと高危険度率は必ずしも一致せず,リスト種が多いからといってその環境に生育する植物がさらされている危険性が高いとは言えないことが確かめられた.今回検討したレッドデータブックの掲載種類数は,近畿版862種類,愛知県版350種類,神奈川県版432(シダ類の雑種を除く)種類であるが,このうち3〜4割は高危険度率が比較的低い森林性の種類であった.近畿地方についての分析からは,水湿地・草地環境の中でもとりわけ強い人為によって維持されてきた二次的自然環境(水田,水域,カヤ草地)での高危険度率が高いことが示された.これまでにもウェットランドや二次的自然の保全についての緊急性が訴えられてきたが,この二つの要素を持つ環境は「種の絶滅の危険性」という観点から危機的状態であることが確認された.

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