著者
田中 蕃
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
日本鱗翅学会特別報告 (ISSN:05495210)
巻号頁・発行日
no.6, pp.527-566, 1988-09-30
被引用文献数
7

1)ZELINKA&MARVAN(1961)が底生動物相による河川の水質汚濁度を調査するために開発した手法を応用し,蝶類群集を指標とする新しい環境評価の一方法を提示した.すなわち,群集を構成する種群とその生息数を調査し,これに種別生息分布度と指標価を導入した式によって環境階級存在比(ER)を算出する.本法による評価方法の特徴は,この式によって調査地内に不均質に分布する環境階級要素を抽出し,その比率からその地の環境を綜合的に判定するところにある.2)環境は,人類営力のかかわりの深浅によって,四つの階級に分類した.また,日本産蝶類各種がどの環境階級をどの程度選択して生息しているかによって「生息分布度」を提示した.ついで,この生息分布度の偏り方を基準として「指標価」を種ごとに定めた.3)1983年に愛知県猿投山において,本法による実践的な研究を行い,本法が環境の相観的な把握による評価とよく一致した評価を与えることを証明した.4)本法を既存の個体数調査資料を用いて,その汎用性と妥当性を検討した.その結果,ER値と環境階級の関係グラフに,環境状況に応じて一定の型があることがわかり,その特徴から環境判定のためのモデルグラフを提示した.これにより,評価を視覚的かつ直観的に行えるようにした.5)環境の判定に常用される優占度指数および多様度指数によって,本法の有効性を検定した.本法による評価はこれら指数とは整合的な関係にあり,生態学的な裏付けを確認した.6)精度については,まだ事例が少なく明確ではないが,既存資料を適用した場合の結果から考察すれば,環境の人工的改変が徐々に行われた場合のモニタリング的な評価方法としてはかなり有用と思われる程度と判断される.7)本法において誤差をもたらすと思われる諸要素(生息分布度,指標価,個体数補正,調査時刻,調査回数,個体数年次変動)について考察を加えた.8)水域という閉鎖系で成立したZELINKA-MARVAN法の陸域という開放系での適用について,諸々の問題点をあげて検討した.

言及状況

Twitter (1 users, 1 posts, 0 favorites)

こんな論文どうですか? 蝶による環境評価の一方法(田中 蕃),1988 http://t.co/V8pfA1G8q5 1)ZELINKA&MARVAN(1961)が底生動物相による河川の水質汚濁度を調査するために開発した…

収集済み URL リスト