著者
梅野 貴恵
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 = Maternal health (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.498-505, 2010-07-01
参考文献数
20

本研究は,長期母乳育児経験をもつ女性の更年期症状の関連因子を因果モデルによって構造的に明確にすることを目的とした。産後12ヵ月までの母乳栄養育児を継続したことのある,現在40〜60歳の女性103名を対象に,著者が2005年に調査したデータを用いて,共分散構造分析を行った。更年期症状は,『更年期の心理的満足度』と密接に関連し,さらに成熟期における『出産・育児体験歴』が『更年期の心理的満足度』に強い影響を与えていることが認められた。つまり出産回数,母乳育児期間,産後の無月経期間などの頻度が多くなるほど『更年期の心理的満足度』が高まり,『更年期の心理的満足度』は,生きがい感や夫婦関係満足感,仕事やりがいなどの心理面に影響され,さらに『更年期の心理的満足度』を高めることとなる。この『更年期の心理的満足度』が高い人ほど更年期症状が軽度であることが本モデルにより示された。以上のことから,出産や母乳育児,産後の無月経などの成熟期における経験が,女性自身の更年期の心理社会的背景に影響を及ぼし,更年期症状に結びついていることが示唆された。

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