著者
田中 美樹 布施 芳史 高野 政子
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 = Maternal health (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.71-77, 2011-04-01
参考文献数
13

本研究の目的は,父親が「自分は父親になった」と自覚した時期や出来事と,児への愛着や子育て行動にどのように影響しているのかを明らかにすることである。対象者はA市内の保育園に通う3歳未満の子どもをもつ父親で,属性,父親として自覚や子どもへの愛着に関する無記名自記式質問紙法を行った。愛着に関する項目は,大日向により信頼性が確認された愛着尺度を用いた。父親の自覚がある者は97.1%で,自覚をもった時期は「子どもを初めて見たとき」32.9%,「初めて抱っこしたとき」30.0%であった。子どもへの愛着得点が高い父親は低い父親に比べ,父親としての自覚で「強く思う」と答えた割合が高く,父親としての自覚と子どもへの愛着に関連を認めた(P<0.05)。さらに,育児参加への自覚の認識が高い父親は父親としての自覚も高かった(P<0.05)。多くの父親が出生直後の子どもに触れることや顔を見ることで父親としての自覚を感じていた。父親としての自覚と子どもへの愛着,育児参加の自覚とも関連を認め,父親が父親としての役割を果たすとき,その根底にあるものは,父性の芽生えや「父親になった」という自覚であることが示唆された。
著者
小林 益江 中嶋 カツエ 田中 佳代
雑誌
母性衛生 = Maternal health (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.370-374, 1998-12-01
被引用文献数
4
著者
八田 真理子 太田 郁子 家坂 清子 蓮尾 豊 北村 邦夫
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 = Maternal health (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.629-636, 2010-01-01
参考文献数
18
被引用文献数
1

低用量経口避妊薬(以下「OC」)がわが国で発売されて10年になるが,いまだその普及率は低率である。一方で,OC服用により性感染症(以下「STI」)の拡大をまねくのではないかと危惧する考え方もある。今回,「OC服用で若者のSTIを拡大させているか」を知ることを目的に臨床現場で調査を行った。全国の避妊教育ネットワークに所属する25の産婦人科施設で受診し,クラミジア抗原検査を受けた29歳以下の女性1,630人に対して,OC服用の有無と性行動について詳細に問診した。その結果,OC服用・非服用間で,初交年齢,パートナー数,コンドーム使用状況などに有意差は認めず,クラミジア抗原陽性率もOC服用者で13.8%,OC非服用者で13.3%と有意差はなく,OC服用者の性行動が活発であるとはいえないことがわかった。OC服用者は,二重防御法の実践や不顕性感染発見のための検査などで定期的に産婦人科を受診していることから,むしろSTI予防や自身の健康管理に対する意識が高いことが示唆された。
著者
倉田 真由美 宮田 久枝 樋口 善之 松浦 賢長
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 = Maternal health (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.468-475, 2009-01-01
参考文献数
14

【目的】本研究は現代の高校生と大学生の男女を対象にダイエットの実施状況について調査し,「ダイエットの経験の有無とその結果」と「自己肯定感」との関係を明らかにすることを目的に調査研究を行った。【方法】高校生235人,大学生305人の男女合計540名(有効回答数511名)を対象に,ダイエットの状況とあわせて,4つの下位領域からなる自己肯定感尺度を用いて質問紙調査を実施した。【結果】(1)学校別,性別のいずれも「ダイエットの有無とその結果」と「自己肯定感得点」との交互作用が有意であり,(2)高校生・大学生の「ダイエットに成功した」と答えた群の自己肯定感得点と他の2群(ダイエットをして失敗した・ダイエットをしたことがない)との間に有意な差は認められず,ダイエットの成功が自己肯定感得点を高める要因となるということは示されなかった。また,ダイエットの失敗が自己肯定感得点を引き下げるという逆効果も認められなかった。(3)男性の「ダイエットに成功した」と答えた群の「自己肯定感得点」が,他の2群(ダイエットをして失敗した・ダイエットをしたことがない)よりも有意に大きく,男性にのみ,ダイエットに成功した者の自己肯定感得点が高い傾向にあることが示された。以上の結果から,男性の体重変動に基づいた,健康目的のダイエットの成功経験のみ,自己肯定感得点を高める効果をもたらすことが示されたが,高校生・大学生のダイエットの結果(成功・失敗)のいずれも,自己肯定感を変動させる要因にはならないことが示唆された。
著者
清水 嘉子
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 = Maternal health (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.530-540, 2002-12-01
参考文献数
23
被引用文献数
4

国籍別上位にある3カ国の在日韓国,中国,ブラジル人の育児問題を明らかにすることを目的として調査した.外国人の多在住4市の保育園に調査用紙を配布し韓国・中国・ブラジル人の母親210人より回収された結果を国別に分析し,日本の母親625人との比較を行った.その結果,在日外国人の育児に関する受け止めの違いが明らかとなった.育児ストレスはブラジルの母親が最も低く,次いで中国,韓国,日本となっていた.育児幸福感は逆の順位となり日本の母親が最も低かった.夫に対する信頼や大切な気持ちは日本の母親が最も低く,育児を取り巻く人に対するストレスが日本の母親に高いことが裏づけられた
著者
蝦名 智子 松浦 和代
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 = Maternal health (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.111-118, 2010-04-01
参考文献数
16
被引用文献数
1

本研究は,思春期後期における月経・月経随伴症状の実態,セルフケアの実態,月経教育の実態と今後の課題を明らかにすることを目的とした。第1〜3学年の女子高校生421名を対象に質問紙調査を行い以下の結果を得た。1.対象の平均年齢は16.3歳であった。初経が発来しているものは約99%であり,平均初経年齢は11.9歳であった。2.MDQ(Menstrual Distress Questionnaire)得点から,思春期女子の月経随伴症状は,先行研究に比較して強くなっていることが示された。月経随伴症状は,経血量が「多い」群と,月経の不安・悩みが「ある」群で強く有意の差があった。3.月経の記録を記入しているものは132名(40.2%)であり,月経の記録を記入しているものの割合は,学年進行に伴い有意に高かった(p<0.001)。4.月経に関する教育内容のうち受けたことがない割合が高かった項目は,「月経前症候群」26.9%,「月経の記録と観察」23.0%,「基礎体温の測定と記録」20.9%,「月経中の生活」20.3%,「月経異常」17.6%であった。5.月経教育の実態から,今後の思春期後期における月経教育の重点課題は,1)月経随伴症状の理解,2)月経の観察と記録,3)基礎体温の測定と記録であり,対象者の行動変容をねらいとした教育方法の改善が望まれる。
著者
梅野 貴恵
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 = Maternal health (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.498-505, 2010-07-01
参考文献数
20

本研究は,長期母乳育児経験をもつ女性の更年期症状の関連因子を因果モデルによって構造的に明確にすることを目的とした。産後12ヵ月までの母乳栄養育児を継続したことのある,現在40〜60歳の女性103名を対象に,著者が2005年に調査したデータを用いて,共分散構造分析を行った。更年期症状は,『更年期の心理的満足度』と密接に関連し,さらに成熟期における『出産・育児体験歴』が『更年期の心理的満足度』に強い影響を与えていることが認められた。つまり出産回数,母乳育児期間,産後の無月経期間などの頻度が多くなるほど『更年期の心理的満足度』が高まり,『更年期の心理的満足度』は,生きがい感や夫婦関係満足感,仕事やりがいなどの心理面に影響され,さらに『更年期の心理的満足度』を高めることとなる。この『更年期の心理的満足度』が高い人ほど更年期症状が軽度であることが本モデルにより示された。以上のことから,出産や母乳育児,産後の無月経などの成熟期における経験が,女性自身の更年期の心理社会的背景に影響を及ぼし,更年期症状に結びついていることが示唆された。
著者
今野 佳絵 茆原 弘光 松本 桃代 小笠原 加代子 永井 泰 福岡 秀興 渡邊 浩子 吉池 信男
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 = Maternal health (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.286-293, 2011-07-01
参考文献数
12

【目的】非妊娠時BMI別の推奨体重増加量と新生児の体格との関連,簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ)を用いた栄養素等摂取状況との関連について,妊娠各期を経時的に検討した。【研究方法】対象は基礎疾患のない197名の妊婦。妊娠12,20,32週にBDHQを実施,妊婦健診時に体重測定,分娩後に出生時体重,胎盤重量を測定した。対象者は非妊娠時BMI別にやせ,普通,肥満群の3群に分けた。さらに各群は妊娠推奨体重増加量別に過少,適切,過多群のサブグループに分け,サブグループ間での評価項目の差異を比較検討した。【結果】やせ群において,体重増加量が過少な群は適切または過多に増加した群と比較して,新生児の身長,胎盤重量が小さく,妊娠12週においては栄養素摂取量のn-3系脂肪酸,ナトリウム,亜鉛が少なかった(P<0.05)。【考察】非妊娠時にやせの妊婦が体重増加不良であると,新生児体格が小さくなること,有意に摂取量の少ない栄養素があることが明らかになった。今後は非妊娠時「やせ」の母体や体重増加量不良の妊婦も含めて管理していく必要性が示唆された。
著者
津間 文子
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 = Maternal health (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.573-582, 2013-01-01
参考文献数
14

<目的>祖母が子ども世代に対する子育て支援として「孫育て」を担うことで,祖母自身にどのような影響を及ぼしているのかを明らかにする。<研究方法>対象者は郡部に居住する祖母15名。半構成的面接法で質問し,質的帰納的に分析を行った。<結果>分析した結果【健やかに育つためにできる限りの支援をする】【喜びが新しい役割の形成を促進する】【生活の中心が変化する】【対応を必要とする負担がある】【多様な役割を体力と気力に応じて身に付けていく】【よい関係を築く努力をする】の6カテゴリーと15サブカテゴリーが抽出された。<考察>祖母の「孫育て」は,子ども世代の期待する祖母の役割に沿うことであった。祖母としての役割形成の発展は,家族と良好な関係を築き"元気である"という自覚となり,経験的にいわれてきた親密な人間関係は心身の健康によいという生理学的な効果を支持していた。さらに祖母の自らのライスタイルに子ども世代に対する子育て支援としてかかわる選択は,孫が成人した後も継続する概念となっていることが推察される。
著者
杉下 佳文 上別府 圭子
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 = Maternal health (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.444-450, 2013-01-01
参考文献数
21

周産期は,気分障害が出現しやすくうつ病の時点有病率は10〜15%である。一方で,子ども虐待死亡事例における実母の精神的問題は「うつ状態」が約3割を占め,全国で産後うつ対策が展開されている。死亡した子どもの年齢は,生後0日児の割合が高いことから,虐待死は母親の妊娠期の精神状態に左右され,妊娠期からの抑うつが関連していることが考えられる。産後うつをスクリーニングする尺度はエジンバラ産後うつ病自己評価票(以下EPDS)が広く使用されているが,妊娠期の使用は検討段階であり,欧米においても妊娠期EPDSの得点と産後うつ病発症予測の的中率については議論中である。そこで,妊娠期におけるEPDS使用の臨床応用および妊娠うつと産後うつの関連についてEPDSを用いて検討することの2点を研究の目的とした。定期妊婦健康診査で同意が得られた妊婦161名に妊娠期と産後の2時点でEPDS調査を行った。参加率は79.4%,質問紙回収率100%,産後回収率85.0%であった。妊娠期EPDS高得点者は14.3%であり,産後EPDS高得点者は19.8%であった。妊娠期EPDSの高得点者が産後EPDS高得点者になる相対リスクは17.0であり,両者には中程度の相関が確認された。妊娠期にEPDSを使用することは,産後うつ疑いを抽出する意味があり,臨床への応用が示唆された。
著者
宮本 政子
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 = Maternal health (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.554-562, 2012-01-01
参考文献数
14

本研究は妊娠期に生じる抑うつ的な気分が,妊娠経過中の出来事や妊婦が生育過程で得た抑うつスキーマとどのように関連するかを明らかにする目的で,128名の妊婦に調査を行った。そのうち19名はエディンバラ産後うつ病自己調査票(EPDS)の測定値が9点以上の抑うつが疑われる妊婦であった。この19名を高群とし,妊婦全体やEPDS1点以下の低群20名との比較を事例検討も含めて行った。その結果,高群の妊婦には次の特徴がみられた。1.胎児発育が悪く身体的合併症や産科的異常を複合して発症する妊婦や,精神科などの既往歴を有する妊婦が多い,2.抑うつスキーマが低群や妊婦全体に比べて高く,なかでも他者依存的評価得点が高い,3.妊娠期間中に日常生活や家族関係の問題が発生し,負担度の大きな問題が発生した妊婦では抑うつスキーマが低い場合も抑うつ気分が強い。以上の結果から,妊娠期からEPDSを測定し,9点以上の抑うつが疑われる妊婦や上記1に該当する妊婦は抑うつスキーマを測定することが望ましい。そして,妊婦の心身の状態や抑うつスキーマを継続的に把握し,妊娠経過中必要な精神的ケアや生活指導を行い,適切な時期に専門的治療につなげられる支援体制を整える必要がある。
著者
岡部 惠子 佐鹿 孝子 大森 智美 久保 恭子 宍戸 路佳 安藤 晴美 坂口 由紀子
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 = Maternal health (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.343-351, 2009-07-01
参考文献数
17

「健やか親子21」が課題としてあげている思春期における若年者の人工妊娠中絶,性感染症の増加などの問題解決にとって性教育は重要な役割を果たし得る。しかし,「健やか親子21」の中間報告においてそれらの改善は十分とはいえないという結果とともに,適切な指導者のいないこと,適切な教材に対する共通理解が得られていないことを性教育上の課題としてあげている。本研究はこれらの問題解決への具体的方策を得るために,大学生に対して高等学校時代の性教育に関する認識調査を行った。調査の結果,(1)性教育は約60%が男女合同で受けている。(2)性教育授業担当者は保健体育教諭が85.4%,養護教諭は134%であった。(3)適切な性教育授業担当者としては養護教諭を1位に,性教育の専門家を2位(両者とも6割弱)にあげ,保健師・助産師・看護師は4位(37.9%)であった。(4)性教育を「理解できた」とする者は82.8%,「役に立った」は46.2%であった。(5)性教育の受講内容は「性感染症」を最も多くあげ,「異性の人格尊重」「異性の心理と異性との付き合い方」が少なかった。(6)高校時代にもっと聞きたかったのは「性感染症」「妊娠」「異性の心理と異性との付き合い方」「人間としての生き方」が多かった。以上の結果より,看護職者が高校生への性教育に関与していくための方向性が示唆された。
著者
森田 亜希子 森 恵美 石井 邦子
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 = Maternal health (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.425-432, 2010-07-01
参考文献数
18
被引用文献数
1

本研究の目的は,初めて親となる男性における,産後の父親役割行動を考える契機となった体験を明らかにすることである。妊娠34週以降の妊婦をもつ夫21名を対象に,半構成的面接法によって研究データを収集した。データを質的・帰納的に分析した結果,産後の父親役割行動を考える契機となった体験は,父親役割モデルとの出会いや想起により,自分なりの理想的な父親像について考える,妊娠・出産する妻への愛情を再確認して,夫/父親として協力する気持ちが芽生える,周囲から育児に関する情報を受けて,仕事と家庭内役割のバランスについて考えるなど,10の体験が明らかになった。導かれた産後の父親役割行動を考える契機となった体験の3つの特徴と,この体験をもつための前提条件から,父親としての自己像形成に必要な素材の内容を把握し提供すること,妊娠・出産をする妻に対して関心を高めるよう促すこと,仕事と家庭内役割の役割調整の必要性に気づくよう促すこと,が示唆された。
著者
和泉 美枝 眞鍋 えみ子 吉岡 友香子
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 = Maternal health (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.120-129, 2013-04-01
参考文献数
27

女子大学生530名を対象に子宮がん検診と子宮頸がん予防ワクチン接種行動の関連要因を明らかにするため質問紙調査を行い,医療系と非医療系学部に分け分析した。結果(1)ワクチンを本調査で初めて知った者は医療群19.3%,非医療群65.1%であった。知識得点や既知率は医療群が高かったが既知率50%以下が8項目(66.7%)あった。(2)子宮がん検診受診率は医療群13.9%,非医療群6.6%,受診意思ありは各84.4%, 71.0%でともに医療群が高率であった。受診者の69.8%は自治体での検診を受診し主な動機は自己の健康管理であった。未受診の主な理由は多忙,必要性の自覚や関心なしであった。(3)ワクチン接種率は医療群3.1%,非医療群3.3%.接種意思ありは各76.3%, 49.8%で医療群が高率であった。未接種の主な理由は高額,副作用や有効性の問題,多忙,接種場所の問題,必要性の自覚なしであり,費用の公的補助を希望していた。(4)子宮がん検診受診やワクチン接種意思のある者のほうが関連する知識を有していた。以上から女子大学生の子宮がんに関する予防行動実施率は低く情報や知識不足,自己関与への認識の低さ,費用や環境の関与が示され,知識や自己の健康管理への意識を高められるかかわり,受診環境や公費負担への整備の必要性が示唆された。
著者
片岡 恵理 大川 洋子
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 = Maternal health (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.137-143, 2010-04-01
参考文献数
10
被引用文献数
1

本研究は女子中学生を対象に,体重の減量願望に関連する背景と健康意識を明らかにすることを目的とした。研究方法はF県内2・3年生の女子中学生に無記名式質問紙調査を行い,有効回答268名を分析対象とした。女子中学生はBMIが「痩せ・標準」であっても体型の主観的評価は,「太った体型」ととらえる者が多かった。また,70.1%の中学生が減量を望み,痩せた体型を肯定していた。学年別では2年生より3年生が痩せの肯定感が高く,減量を望む者が多かった(p<0.01)。このことから,女子中学生は体重増加とともに自分の体型に否定的となり,体重を減らしたいと望む者が多くなることが示唆された。つぎに,51.9%の女子中学生が,思春期の体重増加は性成熟のために大切であると認識していたが,体重の減量願望をもつ者は,体型に対して否定的で痩せ志向も高かった。しかも,女子中学生にとって体重増加が大切という認識をもつ者は少なかった。その反面,痩せ過ぎは貧血,骨折,月経が止まるなど健康上の問題を意識していた(p<0.05)。以上のことから,女子中学生に対する健康教育として性成熟に向けた体重増加の必要性を正しく理解させることが重要である。
著者
樋口 善之 松浦 賢長
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 = Maternal health (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.500-504, 2002-12-01
参考文献数
6
被引用文献数
2
著者
桃井 雅子 堀内 成子 片岡 弥恵子 江藤 宏美
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 = Maternal health (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.507-512, 2009-01-01
参考文献数
12
被引用文献数
1

妊婦68名を対象に「下肢の冷え性の有無」と「皮膚温(深部温および表面温)」との関係を分析するとともに「腰痛の有無」と「皮膚温」との関係についても分析した。対象者のうち冷え性の自覚がある妊婦は38名,ない妊婦は30名であった。冷え性の自覚あり群は自覚なし群にくらべて"足底部深部温"と"足拇指表面温"がともに低く,"前額部深部温"と"ふくらはぎ表面温"は,差はなかった。また,"足底部深部温と前額部深部温との較差"において,冷え性の自覚がある群は,ない群に比べて有意に大きかった(p<0.05)。腰痛の有無と皮膚温の関連では,腰痛のある群のほうが"足底部深部温"(p<0.05)と"足拇指表面温"(p<0.001)ともに,ない群に比べて有意に温度が高かった。また"前額部深部温と足底部深部温との較差"は,腰痛のある群のほうが小さかった(p<0.05)。"前額部深部温"と"ふくらはぎ表面温"に関しては,両群とも違いはなかった。今後,妊娠中の体温や子宮増大による腰部神経への負担などの身体的特徴を考慮した検討の必要性が示唆された。
著者
中村 康香 跡上 富美 竹内 真帆 吉沢 豊予子
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 = Maternal health (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.313-321, 2012-07-01
参考文献数
19

入院中の切迫早産妊婦がどのように妊娠を受けとめているのか明らかにするため,産科を取り扱う7医療施設において,切迫早産の診断がつき, 1週間以上持続点滴を伴う治療にて入院している妊婦189名に対して,妊娠についてどのように思っているかについて自由記述の回答を依頼した。分析は,自由記述の内容を,質的帰納的に分析した。その結果,肯定的受けとめとして,【うれしさと感動】【母親とわが子の実感】【付き合っていけそうな妊娠】【妊娠によるメリットを実感】【人生の糧となる体験】【家族とのつながりを実感】【出産を意識】【感謝の気持ちを実感】の8つのカテゴリ,両価的受けとめとして,【妊娠の喜びと不安】【妊娠の現実感と非現実感】【妊娠の喜びとつらさ】【妊娠継続と早期終了】の4つのカテゴリ,否定的受けとめとして,【拒否したい妊娠】【予想と異なる妊娠】【他人事の妊娠】【不安だらけの妊娠】【自分への負担がある妊娠】の5つのカテゴリが認められた。入院している切迫早産妊婦に対して,胎児の安全性が確保されるような支援を行い,妊娠に対する受けとめが少しでも肯定的になるように援助していくことが大切である。
著者
我部山 キヨ子 岡島 文恵
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 = Maternal health (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.198-206, 2010-04-01
参考文献数
12

医療の進歩および看護・助産の知識や技術の向上に対応し,今後の助産師の卒後教育のあり方を探る目的で,京都府下の産科関連30施設の勤務助産師254人を対象に,卒後教育が必要な理由,卒後教育の時期・内容・問題,助産師免許更新制度などについて自記式質問紙調査を実施し,以下の結果と示唆を得た。1. 99.2%の勤務助産師は,「自身の能力の維持・向上」「本や資料で得られない知識・技術を学ぶ」などの理由で卒後教育が必要と考えていた。教育内容では,70%以上の人が「産科救急」「乳房管理」「新生児蘇生」を重要と答えた。とくに全年代が重要としたのは「異常や救急」,20歳代では「診断や技術」,30歳代以上では「助産管理・医療安全教育・職業倫理」などであり,年齢層や経験に即した卒後教育が重要であることが示唆された。2. 卒後教育で重要な時期は「1年目」が最も多く,74%が3年以内と答えた。3. 卒後教育上の問題は,「時間がない」61.8%,「受講料が自己負担」45.7%であった。これらの結果から,重要と考える教育内容は年齢層で異なるため,助産師の経験や専門性を考慮した教育内容が重要であることが示唆された。また,助産師数は看護師数に比べると極めて少ないことから,「卒後教育のための時間確保」や「受講料の援助」などの卒後教育環境の整備も必要である。