著者
門脇 健
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.84, no.2, pp.255-281, 2010-09-30

カントの『視霊者の夢』(Traume eines Geistersehers)、シラーの『招霊妖術師』(Der Geisterseher)においては、ドイツ語のガイスト(Geist)は「霊」と訳されている。それは、啓蒙的な合理的世界の外に存在し、しかしその外からこの機械的な合理的世界に生命というエネルギーを注入するものとイメージされている。「啓蒙」によって昼が明るくなればなるほど、ガイストは彼岸の闇の中で妖しく蠢くのである。しかし、ヘーゲルの『精神現象学』(Phanomenologie des Geistes)つまり「ガイストの現象学」では、ガイストは実体であるとともに主体として「現在という昼」に帰還してくる。それは、否定性という「死」の力を伴い彼岸の夜の世界から帰還してくるのである。この否定の力が、我と我々を媒介しガイスト的な共同体を形成してゆくのである。つまり、生命のうちに死という否定をもたらすことで、人間的な共同体が形成されるのである。

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