著者
INOUE HIROSHI
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.9-13, 1961-06-25

Callidrepana hirayamai NAGANOヒラヤマカギバ このカギバは原記載(1918,昆虫世界,22:358,pl.12,f.7)で長野県木曾山産の1♂(1915年7月3日,平山修次郎採集)が記録されて以来全然引用されず,私は名和昆虫研究所でtype specimenをさがしたが見付けることができなかったので,日本産蝶蛾総目録,4:372,1956では「分類上の位置不明」として置いた.1960年の春からカギバガ科全体の再検討をはじめたところ,鹿児島県肝属郡田代村産の大型なCallidrepanaの1♂(1928年5月13日河田党採集)を入手したが,これはまぎれもなく野村(1937,九大農学部学芸雑誌,7:450,f.13)が屋久島からニューギニアのC. discipunctataの亜種として記録した♂(1936年11月15日)と同じ種だった.しかしCallidrepanaは東洋熱帯に多くの種が分布し,私にはとうてい正しい同定ができそうもないので,British MuseumのA.E.WATSON氏に標本を送り比較をお願いしたところ,恐らく新種であろうとの解答が来た.丁度私の標本が英国へ郵送されている間に,山本義丸氏から屋久島で採集された新種としてCallidrepana yakushimalis YAMAMOTOヤクシマカギバの原稿がTineaに投稿されたので,私は編集者としてこれを他の原稿と共に印刷所へ送った.更に昨年秋に国立科学博学館に送られて来た和歌山県串本の蛾のなかに体が虫害でなくなった同じカギバの1♂(1959年2月10日,森島千景採集)を見出し,前に述べた鹿児島の♂と共に,C. hirayamaiの原記載と読みくらペたところ,疑いもなくこの大型のCallidrepanaこそヒラヤマカギバであることが判明した.私がこの結論に達したときは,既にThiea,Vol.5,No.2の印刷が進行してしまい,山本氏の新種を取り消すことができなくて,残念ながらそのまま発表されてしまった(1960,Tinea,5(2):334,f.1-3).以上のような経過でヒラヤマカギバは,屋久島・九州南部及び本州南半の太平洋側に分布していることがわかったので,今後更に各地から発見されることが期待される.Oreta pur purata INOUEインドガギバ このカギバは長野(1917,昆虫世界,21:460,465:1917,名和昆虫研究所報告,2:129,pl.3,f.14)によって九州からO. extensa WALKERインドカギバとして記録された.そのご松村(1927,北大農学部紀要,19:45,pl.4,f.7)は台湾産の1♂に基ずいてO. extensa ab. fuscopurpurea という「異常型」を発表し,これはPsiloreta extensa f. fuscopurpureaタイワンキオビカギバとして昆虫大図鑑:746,1931に引用されている.Oretaの仲間もCallidrepanaと同じように東洋熱帯に栄えている属で同定がむずかしいので,WATSON氏にジャワ産の「真の」extensaを借用して日本産とくらペたところ,四国や九州のインドカギバが外観でも雄交尾器の形でも全然別の種であることがわかった.更に昨年秋に北海道大学農学部でfuscopurpureaのtypeを調べたが,これは日本のインドカギバと同じであった.異常型として発表された学名は種あるいは亜種名としての先取権をもたないので,ここに改めて新種として記載した.最近インドカギバをO. extensa fuscopurpurea MATSUMURAという亜種としているのは,私(1956,蝶蛾総目録,4:370)が何も根拠なしに,ab(又はf.)をsubsp .に変えたためで,亜種に昇格させるペき理由は誰も述べていない.なお,台湾にはインドカギバのほか真のO. extensa WALKERも分布している.インドカギバも暖地の蛾で,分布図に示した通り,四国の南半から九州に分布していて,ヒラヤマカギバよりもはるかに沢山採集されている.

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