- 著者
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KOBAYASHI HIROSHI
- 出版者
- 日本鱗翅学会
- 雑誌
- 蝶と蛾 (ISSN:00240974)
- 巻号頁・発行日
- vol.20, no.1, pp.41-56, 1969
Eilema属はヒトリガ科Arctiidae,コケガ亜科Lithosiinaeに属し,非常に種類の多いグループで,北米を除く各大陸に分布している.日本に分布しているEilema属の各種は互いによく似ているばかりでなく,♂♀でまったく違った翅形・色彩・斑紋を示す種もあって,これまでその同定,学名の適用に多くの誤りがあった.INOUE & YAMAMOTO (1961, Kontyu, Vol.29:72〜78)は特に学名の使用法が混乱している5種の整理を発表し,また,井上(1961,日本産蝶蛾総目録,6:626〜629)は日本産(琉球列島を除く)として12種を挙げている.本文では,上に述べた文献を中心として学名および和名を採用し,主に♂交尾器の形態による既知12種の分類を試みた.♂交尾器は,最も信頼できる種の区別点を示すがcornutusの形や数には個体変異があり,ことに小さな骨片から成る場合は,その数が必ずしも一定していないので,この点は注意しなければならない.日本産のみについて比較すれば,この属の♂交尾器は,全体としてよくまとまっているが,E. cribrata STAUDINGERヒメキホソバだけが,かなり異質的なvalveを持っている. Juxtaの形態から,この属は2つのグループに大別できる. 1.Juxtaは骨化の強い角状の突起をなす:E. degenerella WALKERシロホソバ, E. fuscodorsalis MATSUMURAヤネホソバ, E.japonica LEECHキマエホソバ, E. minor OKANOニセキマエホソバ, E. coreana LEECHヒメキマエホソバ, E. griseola aegrota BUTLERキシタホソバ, E. okanoi INOUEミヤマキベリホソバ. II. Juxtaの骨化はいっそう弱く,両側にある1対の棒状骨片は,種によって中央で,融合するが,決して角状の突起とならない.このグループはvalveの形から史に2つに分けられる. 1,ValveはEilema独特の形で, harpeが先のとがった角状の突起:E. nankingica DANIELヒメツマキホソバ, E. tsinlingica DANIELキムジホソバ, E. depressa pavescens BUTLERムジホソバ, E. laevis BUTLERツマキホソバ. 2.Valveには角状のharpeがなく,先端部は丸味をもち,帯状に小針状物が並んでいる:E. cribrata STAUDINGERヒメキホソバ.翅脈にはかなり個体変異があるが,前翅に小室をもつのはE. depressaどlaevisだけで,両種ともその特徴は安定していない.脈8と9は有柄だが, E. japonicaだけは合して1本の脈となっている.脈11が12と完全に離れているのはE. fuscodorsalisだけで,他の種では12と接するが翅頂まで,または短距離の間結合する.