著者
井上 寛
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.63-73, 1991-07-15

本文を書くに当たって標本を提供していただいた平野長男,飯島一雄,神保一義,亀田満,佐々木明夫,高橋雅彌,田中多喜彦,山本光人,矢崎克己,吉本浩の諸氏,故江波戸俊彌,渡辺徳の両氏に厚く御礼申し上げる.Nola neglecta INOUE シロバネコブガ(新称) 私が長いあいだN.nami(INOUE)ナミコブガとN.ebatoi(INOUE)ウスカバスジコブガと混同していたもので,北海道でナミコブガと同定されていたものの一部は本種にぞくし,ウスカバスジコブガは今のところ北海道でとれていない.ナミコブガに最も似ているが,翅全体がいっそう白っぽく,前翅外横線が各脈上でこまかく屈曲せず,直線的でなめらか.北海道,本州の東北及び中部山地に分布する.Nola funesta INOUE クロバネコブガ(新称) 翅は細く,前翅外縁は傾斜している.体翅とも黒いが,前翅の基部と中央部は他の部分より淡色.雄触角の繊毛は長い.長野県の島々谷と愛知県北設楽郡段戸裏山で春に採集されている.恐らく中部山地に広く分布しているだろう.Nola hiranoi INOUE ヒラノコブガ(新称) 雄触角の櫛歯は,最長の部分で小節の幅の2倍くらい.前翅の基半と頭胸背は淡黄色,外縁部は暗い赤褐色,外横線の部分は赤褐色帯となる.N. trilinea MARUMOミスジコブガにやや似ているが,前翅が赤褐色で横線が不明瞭なので区別できる.長野県豊科町大口沢で平野長男氏が1981年7月25日に採集した2♂2♀と,群馬県水上町谷川温泉で吉本浩氏が1989年8月8-11日にとった1♀しか検していない.Meganola basisignata INOUE トウホクチビコブガ(新称) 後出のエチゴチビコブガの第2化に近い大きさで,M.costalis(STAUDINGER)ヘリグロコブガにやや似ているが,雄触角の櫛歯ははるかに長い.前翅の内外横線は不明瞭で,前縁部でやや黒っぽくなる.前後翅とも横脈点がある.宮城県と秋田県でとれた4♂しか私は検していない.Meganola bryophilalis (STAUDINGER) モトグロコブガ ベルリンでSTAUDINGERのタイプ標本を検した結果,M.basifasia (INOUE)とbryophilalisとが同種であるとの確信を得たので,モトグロコブガの北海道亜種をM. bryophilalis basifascia (INOUE),本土亜種をM. b. hondoensis (INOUE)とし,沿海州の原名亜種と区別した.Meganola strigulosa (STAUDINGER) エチゴチビコブガ 上記の種と同じく,タイプ標本(沿海州)を調べたら,strigullosaはM. satoi (INOUE)と同種なのでエチゴチビコブガをM. strigulosa satoi (INOUE)という日本の亜種としたNola strigulosa STAUDINGERは,LEECH,1889,以来今日までM. fumosa(BUTLER)クロスジコブガのシノニムとされていたし,一時私(1958,1959)は沿海州や北海道亜種としていたが,これは明らかに間違いである.前翅内横線がfumosaでは強く外方に半円形に張り出しているが,strigulosaではそのようなことはない.

言及状況

Twitter (1 users, 1 posts, 0 favorites)

こんな論文どうですか? コブガ亜科覚え書き.日本からの4新種とSTAUDINGERが沿海州から記載した2種について(井上 寛),1991 http://t.co/SHee4x4h

収集済み URL リスト