- 著者
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野口 友紀子
- 出版者
- 一般社団法人日本社会福祉学会
- 雑誌
- 社会福祉学 (ISSN:09110232)
- 巻号頁・発行日
- vol.50, no.4, pp.29-41, 2010-02-28
大河内の社会事業論では社会事業の対象を「経済秩序外的存在」と限定し,社会事業に対する科学的根拠のない伝統の破棄が述べられた.本稿では大河内の社会事業をとらえる科学と対象者限定の視点に着目し,その対抗軸として伝統と対象者の拡大とをおき,科学/伝統,対象者の限定/拡大という枠組みから,当時の社会事業の捉え方に関する総合的視点を提示した.これら2つの軸から,当時の理論は科学性を重視し対象を拡大する「普遍拡散型社会事業」,伝統を重視し対象を拡大する「伝統融合型社会事業」,伝統を重視し対象を限定する「慈善型社会事業」,科学性を重視し対象を限定する「科学的固有型社会事業」に分類できた.「普遍拡散型」は社会改造運動,「伝統融合型」は厚生事業,協同組合運動など,「慈善型」は人格的保護や応急的保護,個別的救済など,「科学的固有型」は社会的文化施設,ケース・ワークなどと社会事業の方向性をとらえていた.