- 著者
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蜂谷 俊隆
- 出版者
- 一般社団法人日本社会福祉学会
- 雑誌
- 社会福祉学 (ISSN:09110232)
- 巻号頁・発行日
- vol.50, no.4, pp.42-54, 2010-02-28
糸賀一雄の思想については,1946年の近江学園設立以前にその準備期間があるとされ,先行研究では宗教哲学の専攻や,教員時代に私淑した哲学者の木村素衛の影響が言及されている.しかし,糸賀の思想には木村以外の人物からの影響も少なくなく,糸賀の思想の全体像はまだ解明されているとはいえない.本論文では,糸賀が1941年に滋賀県庁に赴任した直後から戦後にかけて下村湖人と親交があり,下村の展開していた「煙仲間」運動に関与していることに着目した.そして,戦前に糸賀と下村が出会って,1954年に下村が逝去するまでの両者の具体的な交わりを明らかにするとともに,糸賀の「一隅を照らす」姿勢や「同心円」概念には下村の思想や「煙仲間」運動の運動方針,さらにその前身である壮年団の運動方針との関連がみられるという結論に至った.これは,糸賀の思想をとらえ直す際に重要な視点になると考えられる.