- 著者
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古田 公人
- 出版者
- 樹木医学会
- 雑誌
- 樹木医学研究 (ISSN:13440268)
- 巻号頁・発行日
- vol.7, no.1, pp.7-14, 2003-03-31
- 参考文献数
- 22
- 被引用文献数
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1
イロハモミジ樹上のモミジニタイケアブラムシ個体群の動態を13年間調べ、発生量(日・個体数)とピーク個体数について生物季節と天敵類の影響を解析した。(1)調査木上では通常、幹母、その仔虫(春の仔虫という)、越夏虫、秋の有翅虫、その仔虫である有性世代(秋の仔虫という)の5世代を経過する。(2)春と秋に活発な個体群が形成され、春の個体群は幹母とその仔虫、秋の個体群は有翅虫とその仔虫が主体である。(3)秋と翌春の全発生量間には高い正の相関があるが、春とその年の秋の全発生量間には有意な関係はない。(4)有翅飛来週が遅いと秋の有翅虫の発生量は小さい。(5)幹母ピーク数が多いと幹母の産仔開始に比べてヒラタアブ幼虫初出現は早まり、幹母の増殖率は低下する。ヒラタアブは増殖率を密度依存的に低下させる。(6)発育を開始した越夏虫ピーク数と同年春の仔虫世代ピーク数のそれぞれの自然対数値の差、すなわち分散せずに同一の樹上に残るものの割合は幹母ピーク数の上昇に伴って密度依存的に低下する。春の仔虫世代有翅虫の分散は個体群の調節機構として働いている可能性がある。(7)同一樹上での長期にわたる個体群動態に関しカエデの生物季節は直接的な影響をもたない。