著者
谷井 良
出版者
日本マネジメント学会
雑誌
日本経営教育学会全国研究大会研究報告集
巻号頁・発行日
no.62, pp.39-42, 2010-10-29

従来のイノベーション研究を見ると,イノベーションの企業内の過程にのみ注目している場合がほとんどである。だが,本来,イノベーションは広く社会に普及・浸透してこそはじめて成功といえる。そこで,本報告では,イノベーションにおける普及過程,すなわちイノベーションの企業外的過程の重要性に焦点をあて,企業がイノベーションによって文化を創る過程を明らかにすることを目的とする。本報告では,イノベーションの企業外的過程を顧客創造,市場創造,文化創造に分類する。しかし,文化を創造している企業がごく一部しか存在しないことを考えれば,文化創造には顧客創造や市場創造とは異なる普及メカニズムがあると推察される。そこには,従来の普及メカニズムとは異なる新たな普及メカニズムが存在していると考えられる。そこで,実際に文化を創造したと想定される事例研究(家庭用ゲーム,携帯電話,インスタントラーメン,ハイブリッドカー)を行った結果,文化を創造するためには創発現象,意図的波及効果,社会システムの自己組織化という3つの要素が深く関わっていることを抽出した。そして,この文化創造の要素である創発現象,意図的波及効果,社会システムの自己組織化には,社会システムの自己組織化に至るまでの創発現象と意図的波及効果のパターンに相違があり,そのパターンの相違により普及速度と戦略の達成度に大きな違いが見られる。本報告では,これら文化創造のパターンとそのパターンによる普及速度と戦略達成度との関係を明らかにすることを試みたい。

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