著者
八木 みどり
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大学大学院紀要. 文学研究科篇 (ISSN:18833985)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.125-138, 2009-03-01

形容詞「おぼつかなし」の用字として現在では「覚束なし」が使われることが多いが、鎌倉時代に成立し、その後さまざまな人びとによって改変され、増補されていったとされる平家物語諸本ではこの語が数種類の文字で表わされている。その中に辞書などにもあまりみられない「■」という文字がある。管見では現存作品のなかでは平家物語諸本でしか見ることができない。また字書類の中では、鎌倉時代に成立したと考えられる『字鏡集』を初見として、江戸時代後期には日常つかう字書から消えてしまう。倭字は、字書では慣習的にその文字の出典を書かない傾向があるのでその来歴が不明であることがある。本稿ではこの「■」という文字がどのようにして生まれ、倭字として成立し、消えていったのかを、中国、韓国、日本の古辞書、また平家物語諸本から探ってみたい。(本稿では国字という語の代わりに、日本で作られた漢字に似た文字をあらわすことを明確にするために倭字という語を用いることにする。)

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おもしろかった。聾唖吃態語彙には倭字と覚しき字はないようには見受けられるものの、このような視座も併せ持つべきであろう。 QT 〓おぼつかなし考 : 国字の生成と消滅 https://t.co/s474ktXL2O

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