- 著者
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杉村 智子
- 出版者
- 一般社団法人日本発達心理学会
- 雑誌
- 発達心理学研究 (ISSN:09159029)
- 巻号頁・発行日
- vol.21, no.4, pp.342-352, 2010-12-20
顔などの視覚情報の特徴を言語で表現すると,後の視覚情報による再認成績が低下する現象は言語隠蔽効果(Schooler & Engstler-Schooler,1990)として知られている。本研究では,幼児を対象として,ライブイベントを目撃した際の人物の顔の再認記憶において言語隠蔽効果が見られるかどうかを検討した。調査対象者には,女性が紙芝居を読み男性が紙芝居の手伝いをするという出来事を目撃させ,約1日後に,出来事の内容についての自由再生と,顔の再認課題を行わせた。その際,言語群には,人物の顔や髪型等の人物の特徴についての言語供述を行わせたあとに再認課題を行わせ,統制群には再認課題のみを行わせた。その結果,言語群のほうが再認成績が低い傾向にあった。また,言語群の言語供述については,人物同定の手がかりとはならない主観的情報や誤った情報が述べられる傾向がみられた。これらの結果が,言語隠蔽効果が生起する認知過程の観点と,子どもの目撃証言に関わる実用的観点から考察された。