著者
西村 貴直
出版者
一般社団法人日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.14-22, 2003-03-31

今日,とくに英米を中心としたいくつかの先進資本主義諸国では,既存の福祉国家体制の,大規模な再編成のプロセスのなかで,貧困問題をめぐる社会的な構図が大きく書き換えられつつある。その背景には,貧困の問題を,一般労働者階級の失業や低賃金の問題と,あるいは一般市民が被っている社会的・経済的剥奪の問題と結びつけて把握するのではなく,一般社会とは切り離された「アンダークラス」の構成員が抱える個人的・集団的属性の問題として把握する考え方が存在している。本稿では,こうした「アンダークラス」に言及する,あるいはそれと深くかかわるいくつかの議論の検討を通じて,現代福祉国家における「貧困」をめぐる問題構成の変容の一側面を浮き彫りにしたい。こうした作業は,とくに英米の「ワークフェア」政策から多くを吸収しようとしているわが国の福祉政策の展開を占う意味でも,極めて重要な意義をもつように思われる。

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