著者
赤堀 侃司
出版者
日本教科教育学会
雑誌
日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.87-94, 1986-08-31

本研究は,高校物理テストを事例にして,記述式テストの誤答分析について報告している。本研究では,誤答のタイプを,基本的ミス,ケヤレスミス,前問ミスの3つに分類する。基本的ミスとは,基本的に理解できていない事による誤答であり,ケヤレスミスとは,単純計算ミスや図への記入の仕方等のミスによる誤答であり,前問ミスとは,構成式回答形式になっている問題で,前問が誤答のために生ずる誤答である。さらに,ケヤレスミスを,単純ミス,単位ミス等の5つのカテゴリーに分類する。これらを記号化して誤答内容別の一覧表を作成し,この一覧表から誤答分析を行う。従って,この一覧表は,1,0表示によるS-P表よりも情報量は多い。分析の結果,高校物理Iの力学の運動の単元において,次の様な知見を得た。(1)ケヤレスミス全体は,基本的ミスとの相関が大きい。(2)ケヤレスミスの中で,かんちがいミスは基本的ミスと相関が小さく,理解能力とは別の因子で生ずるミスであると推測される。(3)かんちがいミスは, S-P表の注意係数を大きくする。(4)答案に誤答内容を訂正して返却する事は,同一のケヤレスミスをおこす割合を減少させる効果がある。以上の結果を得たが,ケヤレスミスは全単元に共通している事,基本的ミスに比較して,学習指導の労力と学習効果の上で注目すべき誤答タイプと考えられる。

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