- 著者
-
豊嶋 守生
高山 佳久
- 出版者
- 一般社団法人電子情報通信学会
- 雑誌
- 電子情報通信学会技術研究報告. OPE, 光エレクトロニクス (ISSN:09135685)
- 巻号頁・発行日
- vol.110, no.156, pp.21-26, 2010-07-22
- 被引用文献数
-
2
宇宙空間における通信は,空間的に離れた場所へ情報を伝送するために,通常電波が用いられている.しかし,近年,光ファイバ通信をはじめとする光学技術やレーザ技術の発達に伴い,レーザ光線つまり光波を用いて離れた宇宙機器間で通信を実現できる時代に突入した.電波も光波も同じ電磁波であるが,とりわけ宇宙における光波の利用は,使用レーザの周波数が非常に高いことに起因して,小型・軽量化,高速・大容量化などの特徴を有し,周波数資源の有効活用や法的規制が無いこともあり,電波よりも将来に向けて有望な手段である.欧州では,低高度軌道(LEO)の観測衛星と静止軌道(GEO)の衛星間において,既に2003年から50Mbpsの光通信回線が定常的に運用されている.日本においては,光通信機器を搭載した光衛星間通信衛星(OICETS)が2005年8月に打ち上げられ,欧州の衛星との間で光衛星間通信実験が成功裏に実施された.その後,世界の4局の光地上局(OGS)との間でOICETSを用いた衛星-光地上局間レーザ通信実験が実施され,各サイトにおけるレーザ伝搬データの取得に成功している.情報通信研究機構(NICT)では,これらの伝搬データを持ち寄り,伝搬モデルの構築に資するため,光地上局-OICETS間レーザ通信実験に関する国際ワークショップ2010(GOLCE2010)を主催し,スペインのテネリフェ島で2010年5月に開催した.GOLCE2010では,世界各国での宇宙光通信に関する活動状況も報告された.本稿では,GOLCE2010を通して,宇宙光通信に関する研究開発動向を紹介する.