- 著者
-
永和 良之助
- 出版者
- 佛教大学
- 雑誌
- 社会福祉学部論集 (ISSN:13493922)
- 巻号頁・発行日
- vol.7, pp.39-56, 2011-03-01
本稿は,増加していると言われながらも不明な点の多い介護事故の現状を明らかにすることを目的としている。アプローチの方法としては,事業者から提出された事故報告書を公文書公開制度によって入手し分析する手法を採っている。この「生の」第一次資料を一枚一枚分析した結果,介護事故は圧倒的に転倒事故が多いことや,その発生状況も明らかになったが,本稿の研究上の意義は,これまで詳らかでなかった介護過失 (介護ミス) の現状を明らかにした点にあり,(1)事業者による介護過失が相当数起きていること,(2)過失の直接原因は,介護技術の未熟さと介護知識の不足や,介護従事者の不注意や安全保持の怠慢などにあること,(3)過失の結果,利用者が死亡,骨折を負うなど重大な被害が多数生じていること,(4)にもかかわらず損害賠償の実施件数は極めて少ないことなどを論証している。