著者
福森 隆寛 森勢 将雅 西浦 敬信 山下 洋一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.94, no.4, pp.712-720, 2011-04-01
参考文献数
19
被引用文献数
6

近年,雑音及び残響下における音声認識手法に関する研究が盛んに行われている.それに伴い雑音環境下で音声認識性能を頑健に予測可能な指標も多数提案されている.一方,残響環境下における音声認識性能の有力な予測指標は提案されておらず,残響下音声認識性能の頑健な予測指標の策定は急務である.これまでに残響下音声認識性能の優劣を判別する残響指標として同一室内で固有の値となる残響時間が提案されているが,仮定する拡散音場と実環境との差異から他の残響特性が変化することにより同一環境でも計測箇所によって音声認識性能が変動する.そのため残響時間は音声認識の難しさを表す指標として不十分であることが問題視されている.そこで本論文では,ISO3382 Annex Aで提案されている室内音響指標を用いた残響下における頑健な音声認識性能の予測法を提案する.提案法では初期反射音と後続残響音の関係を表す室内音響指標の中でも特にDefinition(D値)に着目し,事前に様々な環境で複数箇所計測したインパルス応答をもとに算出したD値と音声認識性能の関係を一次直線や二次曲線で近似することで残響指標RSR-D_nを策定する.策定した残響指標RSR-D_nと性能予測を行う残響環境の発話位置におけるインパルス応答をもとに残響下音声認識性能の予測を試みる.評価実験の結果,従来の残響時間に基づく手法と比較して残響指標RSR-D_nは,より頑健に残響下音声認識性能を予測できることを確認した.

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