著者
松金 輝久 武永 康彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.89, no.3, pp.405-413, 2006-03-01
参考文献数
8
被引用文献数
3

ゲームやパズルの計算量や解法に関する研究は古くから行われている.特に最近ではテトリスのようなゲームが注目を集めている.本論文では,対戦型ゲームとして広く知られるぷよぷよを,人力として初期盤面と落下してくるピース列が与えられ,ピースを落下させることにより特定の目的を達成するパズルゲームとして定式化し,その連鎖数判定問題を考える.連鎖はぷよぷよにおける特徴的な性質であり,最大の連鎖を発生させる連鎖数判定問題がNP完全であることを証明する.
著者
鈴木 和明 齋藤 豪 張 英夏 近藤 邦雄 中嶋 正之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.91, no.12, pp.2961-2972, 2008-12-01

ドット絵とは,1990年代前半までの据置き型ゲーム機や現在でも携帯型ゲーム機などで用いられる低解像度の画像の表現手法であり,その表現手法を用いて制作された画像でもある.ゲーム制作などでドット絵が大量に必要になる場合,アーティストが1枚1枚描かなければならず制作に手間がかかるため,本研究では計算機によってドット絵風のキャラクタ画像を生成する手法を提案する.ドット絵風の画像を生成するために,写真から輪郭線を抽出して,その輪郭線をもつ画像を縮小する.はじめに,抽出される輪郭線がドット絵において頻繁に用いられる形状になるように,Canny edge detectorに対してドット絵作成に特化した変更を行い,そのCanny edge detectorを用いて輪郭線画像を生成する.次に,そのような輪郭線をもつ画像を縮小するが,既存の縮小手法では,画像がぼやけたり,画像の輪郭線が途切れたり,画像の線と線が隣接し潰れてしまう問題があった.これらの問題を解決するために,輪郭線を保護しつつ縮小するアルゴリズムを提案する.これらのアルゴリズムを用いて,ドット絵風のキャラクタ画像を生成した.
著者
上東 太一 甫足 創 柳井 啓司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.93, no.8, pp.1397-1406, 2010-08-01
被引用文献数
3

近年,食事に関する健康管理が注目され,より簡単に食事内容が記録できるシステムの実現が望まれている.そこで,本研究では,画像認識技術を用いて食事内容を記録するシステムを提案する.画像認識手法としては最新の機械学習の手法であるMultiple Kernel Learning(MKL)を用いて,局所特徴,色特徴,テクスチャ特徴などの複数種類の画像特徴を統合し,高精度な認識を実現することを提案する.MKLを用いることにより,カテゴリーごとに認識に有効な画像特徴を自動的に推定し,各特徴に対して最適な重みを学習することが可能となる.それに加え,本研究では,提案した食事画像認識手法を組み込んだ食事画像認識システムのプロトタイプを実装した.実験では,50種類の食事画像データセットを構築し,提案手法の評価を行い,平均分類率61.34%を達成した.50種類もの大規模な食事画像の分類は,実用的な精度で実現することが困難であったため報告例がないが,本研究ではMKLによる特徴統合を行う提案手法によって,初めて大規模食事画像分類において高い認識精度を達成することができた.
著者
井上 勝文 黄瀬 浩一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.93, no.8, pp.1407-1416, 2010-08-01
被引用文献数
1

局所特徴量を表す特徴ベクトルを用いた特定物体認識において,メモリ使用量を削減することは,重要な課題の一つである.メモリ使用量を削減する一般的な手法として, "bag of features" モデルに基づくものがある.この手法では,クラスタリングにより複数の特徴ベクトルをある代表ベクトルにまとめることでメモリ使用量を削減している.しかし,得られる代表ベクトルの識別性が低下するため,高い認識率が得られないという問題がある.この問題を解決する一つの方法は,特徴ベクトルを代表ベクトルに置き換えずにそのまま保持して認識処理に用いることである.この際,異なるメモリ削減の方法が必須となる.本論文では,特徴ベクトルの照合に距離計算ではなく, Bloomier filterを用いることでメモリ使用量を削減する手法を提案する.55個の3次元特定物体を用いた実験より, "bag of features" モデルに基づく手法と比較し,同じ認識率を得るために必要なメモリ使用量を1/3に削減することができた.また,1万個の平面物体を用いた実験でも同様に,メモリ使用量を1/7に削減することができた.
著者
鳥海 不二夫 神谷 達幸 石井 健一郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.94, no.11, pp.1740-1750, 2011-11-01
被引用文献数
1

近年,SNS(Social Networking Service)やBlog,Twitterなどのインターネットを利用したコミュニケーションツールの利用が拡大している.SNSのユーザは友人登録機能によってSNS上での他のユーザとの関係を表現する.このようにSNS上に現れる友人関係は,実社会において観測することの困難な人間関係を限定的ではあるが具現化する可能性がある.本研究では性質の異なる多数の小規模SNSを表現可能なネットワーク生成モデルを提案した.提案モデルは,SNSの成長モデルとして知られているCNN+Fitnessモデルに,管理者優先モデル,トライアドフォーメーションモデル,優先的近傍接続モデルを組み合わせて作られた.そして,それぞれのモデル適用率をパラメータとし,モデル化したいSNSに特化して最適化することで,現実の友人ネットワークの構造を近似する.パラメータの最適化にはSimulated Annealingを利用した.また,提案モデルの近似性能を確認するために,ネットワーク指標間の距離に基づいた評価関数を提案した.提案モデルを279の小規模SNSに適用し,提案評価関数で評価した結果,従来のモデルよりも高い精度で小規模SNSの友人ネットワークを近似できることを確認した.また,提案した3種類のモデルについて有効性を確認したところ,管理者優先モデル,優先的近傍接続モデルは友人ネットワーク生成モデル構築上重要であったが,トライアドフォーメーションモデルはネットワークの生成にほとんど寄与しないことが明らかとなった.
著者
木村 翔 筧 康明 高橋 桂太 苗村 健
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.91, no.12, pp.2781-2790, 2008-12-01
被引用文献数
1

筆者らは,プロジェクタ映像の中に,人間には見えないメタ情報を埋め込んで投影できる可視光通信プロジェクタの開発を進めてきた.このメタ情報による機械の制御は,人が目にする映像と画素単位の精度で一致させることができる.本研究は,実世界に根ざした様々なインタフェースを実現するための基盤技術として位置づけられる,これまで,埋め込まれたメタ情報を読み出すにあたり,ホトセンサ付きの受光端末を用いて,映像中の1点での情報を取得していた.本論文では,高速度カメラを用いてこのメタ情報を読み出す手法を提案する.高速度カメラを用いることで,映像全体から複数のメタ情報を同時に取得可能になる.いくつかのアプリケーション例を示すとともに,実験を通じて,その有効性を明らかにする.
著者
住元 宗一朗 中川 博之 田原 康之 大須賀 昭彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.94, no.11, pp.1800-1811, 2011-11-01

近年増加したコンテンツ投稿型SNSでは日々膨大にコンテンツが増え続けるため,嗜好には合っているもののユーザが見逃してしまうようなコンテンツは少なくない.また,多くの推薦技術では精度を重視するあまり,その推薦結果に面白みがないという課題がある.本論文では,主に音楽,イラスト,詩等の創作者向けであるコンテンツ投稿型SNSにおける未知性,意外性を考慮した推薦手法について述べる.未知性に関しては,質の高いコンテンツを投稿する投稿者(有力投稿者)に注目し,コンテンツの質を確保しつつもロングテールのテール部分に属する,ユーザがまだ知らないコンテンツを推薦する.意外性に関しては,多くのコンテンツ投稿型SNSで利用されているFolksonomyを利用する.以上の二つの推薦部からなる推薦エージェントを提案し,イラスト投稿型SNSであるPixivの実データを用い,未知性,意外性に関する評価実験を実施した.その結果,推薦リストの6割に未知性,意外性のあるコンテンツが含まれ,本研究の有効性が確かめられた.
著者
大谷 大和 戸田 智基 猿渡 洋 鹿野 清宏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.91, no.4, pp.1082-1091, 2008-04-01
被引用文献数
3

声質変換において,スペクトル特徴量系列の統計的モデル化技術の発展により,その変換性能は大幅に改善された.しかし,声質変換で用いられる音源モデルでは実際の音源を正確に表現できていないため,その変換音声の自然性は十分なものとはいいがたい.これを改善するために,スペクトル特徴量系列と同様に音源特徴量系列に対しても統計的なモデリングを行う必要がある.本論文では混合正規分布モデル(Gaussian Mixture Model: GMM)に基づく声質変換法の枠組みに対してSTRAIGHT混合励振源を導入する.提案法では,スペクトル特徴量系列及び音源特徴量系列に対して最ゆう推定(Maximum likelihood estimation: MLE)に基づく特徴量変換が行われる.客観評価実験並びに主観評価実験の結果より,提案法により音質,話者性変換精度が大きく改善されることを示す.
著者
孫 維瀚 黄瀬 浩一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.93, no.6, pp.909-919, 2010-06-01

図表や漫画などの線画は,直線または曲線で描く図形であり,画像出版物の中で重要なものの一つである.線画の著作権を保護するため,不正コピーを自動的に検出する手法が求められている.実際に,不正利用者は,線画をそのまま使うだけではなく,オリジナルの一部分,すなわち部分的複製を利用することが多い.その際には,部分的複製は他の素材の中に埋め込まれる形で使われる.加えて,部分的複製はそのままの形で埋め込まれるとは限らず,様々な処理によって改変されることも考えられる.その結果,不正利用の検出が困難となっている.更に,線画の場合,改変の手法として手書きの複製が考えられるが,これが問題をより困難なものとしている.これらの問題に対処するため,本論文では,局所特徴量の照合による画像検索技術を用いて,不正コピーを検索する手法を提案する.具体的には,局所特徴領域の抽出手法としてMSERを,特徴量の記述子としてHOGを用いる.そして,データベースの大きさと検出時間を削減するため,主成分分析で特徴ベクトルを圧縮するとともに近似最近傍探索を用いる.実験により,提案手法は,印刷線画の部分的複製ばかりでなく,複雑な背景に埋め込まれた手書き線画に対しても有効性があることを示す.
著者
中居 友弘 黄瀬 浩一 岩村 雅一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.89, no.9, pp.2045-2054, 2006-09-01
参考文献数
10
被引用文献数
14

本論文では,ディジタルカメラで撮影して得られた文書画像をもとに,データベースから対応する文書画像を見つける文書画像検索の手法を提案する.従来のスキャナを利用した文書画像検索と異なり,ディジタルカメラを利用する場合には射影ひずみなどのディジタルカメラ特有の問題に対処する必要がある.また,大規模データベースでの利用を可能にするため,検索の効率性も重要である.これらの問題に対処するため,本論文では特徴点の局所的配置を特徴量とし,ハッシュ表を用いた投票によって検索する手法を提案する.本手法では,射影ひずみを実用的な範囲に制限し,特徴点の組合せを局所領域に限定することで,計算量の削減を実現する.また,高精度な検索を実現するため,射影変換の不変量である複比で特徴点の配置を表現し,特徴量としている.実験により,10,000ページのデータベースから精度98%,平均処理時間約160ms(特徴点抽出の画像処理に要する約1sを除く)で検索できることが示された.
著者
中山 英樹 原田 達也 國吉 康夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.93, no.8, pp.1267-1280, 2010-08-01
被引用文献数
2

汎用的な一般物体認識の実現のためには,膨大な数の対象と画像のアピアランスを学習する必要があり,人手によって学習過程を管理することは難しい.このため,Web上の大量の画像を用い自律的に画像知識の獲得を行う方法が近年検討されている.これを実現するための学習・認識手法には,精度と同時にスケーラビリティが必要不可欠である.本研究では,大量のWeb画像への適用を念頭に置いた,高速画像アノテーション・リトリーバル手法を提案する.本手法は,複数ラベルが表す画像のコンテクストを用い,高速に学習・認識を行うことが可能である.実験では,まずベンチマークであるCorel画像セットにより比較実験を行い,本手法が多くの既存手法に比べ高速・高精度であることを示す.次に,270万枚のFlickr画像から学習を行い,Web画像マイニングにおける本手法の有効性を検証する.
著者
グエン ミン テイ 川村 隆浩 大須賀 昭彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.96, no.12, pp.2970-2978, 2013-12-01

本論文は,実世界での人々の行動を分析し,状況に応じた適切な情報提示などへ役立てることを目的に,Twitterなどソーシャルメディアから行動ネットワークを構築する研究の一環である.ソーシャルメディアからの行動抽出にあたっては,さまざまな理由から呟かれなかった行動が数多く存在し,結果として行動ネットワークがスパースになってしまうという問題が存在する.そこで,行動の性質とユーザのゴールを考慮した行動ベース協調フィルタリング手法を提案し,欠損行動の推測を試みる.また,協調フィルタリングによる頻度の原理の副作用としての低頻度だが価値のある情報が埋もれてしまう問題に対して,人が成功している人や行動にどのように影響を受けるか,を単純にモデル化し,一定の重み付けを行う方法を提案する.そして,東日本大震災発生時のtweet 337,958件を対象に評価実験を行った結果,提案手法を用いることで行動ネットワーク内の欠損行動ノードを一定程度,補完できることを確認した.
著者
松田 繁樹 林 輝昭 葦苅 豊 志賀 芳則 柏岡 秀紀 安田 圭志 大熊 英男 内山 将夫 隅田 英一郎 河井 恒 中村 哲
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.96, no.10, pp.2549-2561, 2013-10-01

本論文では,独立行政法人情報通信研究機構(NICT)が開発した世界初のスマートフォン用多言語音声翻訳アプリケーション"VoiceTra"を用いた大規模実証実験に関して,VoiceTraシステムの概要,クライアントサーバ間の通信プロトコル,本システムで用いられた多言語音声認識,多言語翻訳,多言語音声合成の詳細を述べる.また,本実証実験中に収集された約1000万の実利用音声データの一部について,聴取による利用形態の分析,更に,実験期間中に行った音声認識用音響モデル,言語モデルの教師無し適応,言語翻訳用辞書の追加に対する音声認識,音声翻訳性能の改善について述べる.
著者
藤原 靖宏 入江 豪 北原 友恵
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.96, no.5, pp.1178-1187, 2013-05-01

Affinity PropagationはFreyらによって近年提案されたクラスタリング手法である.Affinity Propagationはk-means法などに代表される既存のクラスタリング手法よりクラスタリング精度が良いため,様々な分野において用いられている.オリジナルのAffinity Propagationでは全てのデータポイント間でメッセージと呼ばれる値を繰返し収束するまで計算する.しかしこのオリジナルの手法はデータポイントの数の2乗の計算コストを要するため,データポイントの数が多い場合は非常に計算時間がかかるという問題点がある.本論文では収束後においてオリジナルのAffinity Propagationとクラスタリング結果が同じになることを保証する高速化手法を提案する.提案手法は(1)収束値を計算するのに不必要なデータペアを枝刈りするアイデアと,(2)枝刈りされたデータペアの収束値を枝刈りされなかったデータペアの収束値から計算するアイデアから構成される.実データを用いて比較実験を行い,提案手法はオリジナルの手法より高速にクラスタリングを行えることを確認した.
著者
鈴木 雄策 山村 毅
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.90, no.5, pp.1333-1336, 2007-05-01

SVMを用いてコンピュータウイルス記事からウイルス情報(ウイルス名,感染経路,症状)を抽出する方法について述べる.SVMの素性として形態素情報のみを用いた場合,文や節にまたがる表現の抽出精度はよくなかったが,依存構造解析で得られた情報を利用することで抽出精度を大きく向上させることができた.
著者
高木 雅成 山内 悠嗣 藤吉 弘亘
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.93, no.8, pp.1429-1438, 2010-08-01
被引用文献数
3

近年,人や車両などを対象とした物体検出は,HOG特徴量などのアピアランスベースの局所特徴量が用いられる.しかし,アピアランスベースの特徴量のみを用いた物体認識は,識別が困難なサンプルが存在する.この問題に対して,コンテクストとして物体カテゴリー間の共起性を利用した物体認識法が提案され,その有効性が確認されている.しかし,学習サンプル中には同時に存在する確率が低いカテゴリー間の物体に対しても共起性を表現するため,識別精度に悪影響を及ぼす可能性がある.そこで,本論文では特徴量レベルで検出対象カテゴリーと非検出対象カテゴリーの特徴量間の共起性を利用した高精度な物体検出法を提案する.提案手法では,アピアランスベースの特微量に加え,Geometric Contextから得られる"空"や"地面"などの確信度を特徴量として利用し,Real AdaBoostの弱識別器の出力を演算子により結合することで共起性を表現する.従来の共起表現法では,和演算子と積演算子を用いた共起表現法のみであったが,本論文では新たに差演算子を導入する.これにより,アピアランス情報から得られる検出対象の確率を,ジオメトリ情報により補正するような共起を表現することが可能となる.提案手法の有効性を確認するために人と車両のデータベースを用いた評価実験を行い,提案手法は高精度な検出が可能であることを確認した.
著者
杉村 大輔 木谷 クリス真実 岡部 孝弘 佐藤 洋一 杉本 晃宏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.93, no.8, pp.1512-1522, 2010-08-01
被引用文献数
1

本論文では,特徴点軌跡のクラスタリングに基づいた人物追跡手法を提案する.混雑環境下において頑健に個々の人物を区別するために,本手法では歩容特徴と局所的な見えの時間変動の一貫性という二つの指標を追跡の枠組みへ導入する.周波数領域における歩容特徴は,生体認証の分野において頻繁に利用されている指標であり,個人を識別するための重要な手掛りであることが知られている.また,局所領域における見えの時間的な変化は,人物の動きが周りと類似する傾向のある混雑環境下において個々の人物を区別するための効果的な指標となる.このような動きと見えの異なる種類の指標を利用することにより,混雑環境下においても安定な追跡を実現することが可能となる.実環境における実験により本手法の有効性を確認した.
著者
高橋 正樹 藤井 真人 柴田 正啓 八木 伸行
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.92, no.7, pp.1036-1044, 2009-07-01
被引用文献数
1

ゴルフ中継番組で利用可能なティーショット軌道表示システムを開発した.広角で撮影したカメラの実映像上へ軌道を表示できるため,軌道の把握が容易である.また1台の放送カメラから得られる情報のみを用いて軌道を作画できるため,撮影機材や人員を追加する必要がなく,運用性に優れている.2005年日本オープンゴルフ選手権中継にて,放送応用を実現した.しかしショット直後や着地直前のボール追跡が困難なため,打点,着地点,静止点を手動指定する必要があり,「軌道表示まで時間を要する」,「バウンド軌道を表現できない」などの課題も残った.そこで本論文では,全区間の軌道を全自動・リアルタイムで作画可能な新たなティーショット軌道表示システムを提案する.提案システムは,背景輝度に基づくしきい値の自動切換機能,三次元実空間での位置予測による着地タイミング推定機能,過去方向への映像再生による打点までのボール追跡機能を備える.実験により,提案システムが速度,精度のバランスにおいて優れており,即時性,信頼性が要求されるゴルフ中継での運用に適していることを確認した.
著者
小泉 昂也 折原 良平 清 雄一 田原 康之 大須賀 昭彦 Takaya KOIZUMI Ryohei ORIHARA Yuichi SEI Yasuyuki TAHARA Akihiko OHSUGA
出版者
電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18810225)
巻号頁・発行日
vol.J101-D, no.9, pp.1363-1371, 2018-09-01

人や企業は様々な条件下で最適な行動を取るのだろうか.取らないのであればそれはなぜか.その原因を求めることは,実際の個人・企業等の理解を大きく助ける.また,ゲーム理論はスポーツや経済学そしてその他の社会科学の理解に大きく関わってきた.本研究は比較的データが集めやすく混合戦略を適用できるサッカーのPK戦に注目し,独自の確率を考慮した利得表を作成した.その利得表を用いてPK戦におけるキッカーの最適戦略を求め,最適戦略と実際の戦略とのズレを明らかにした.そのズレの原因を求める為にデータセット内の各データ項目についての確率分布を比較するというアプローチをした.データはインターネット動画サイトより収集した,プロ選手による2001年〜2017年の間の世界各国のPK戦150試合(計1539人分)を使用した.実験結果として,最適戦略と実際の戦略との間にズレが存在することが分かった.またそのズレには国籍・スコア差の関与が示唆された.その結果から,サッカーPK戦における最適戦略と実際の戦略との間におけるズレの原因を推定した.本手法はスポーツ分野以外への応用も期待できる.
著者
ズルキフリー ムハマド 田野 俊一 岩田 満 橋山 智訓
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.91, no.3, pp.771-783, 2008-03-01
被引用文献数
4

近年の情報技術の発展により,多くの人は文書を作成するためにワードプロセッサを用いている.しかし,日本語入力は仮名漢字変換に起因する問題点を多く抱えているため,メモ書きのように,素早い入力,及び高い集中力が要求される作業においては,キーボード入力より手書き入力の方が有効ではないかと考えられる.そこで,本研究では入力速度,及び認知的負荷に着目し,日本語メモ書き作業における手書きとキーボードの比較実験を行い,手書き入力の有効性を定量的に評価した.被験者としては,22〜30歳の情報系大学院生10〜15名である.実験結果から,まず入力速度に関しては,キーボードよりも手書きの方が速く入力できるということが分かった.また,あらかじめ記憶させた内容を思い出しながら入力するタスクでは,キーボードよりも手書きの方が記憶した内容を多く入力できるということが分かった.更に,ビデオ及び音声を視聴しながら,手書き及びキーボードでメモを取るタスクでは,キーボードで入力されたメモの方が内容が不十分であり,被験者のビデオ及び音声の内容に対する理解度も低いということが分かった.