著者
米澤 聡士
出版者
国際ビジネス研究学会
雑誌
国際ビジネス研究 (ISSN:18835074)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.93-107, 2010
参考文献数
16

本稿の目的は、外航海運企業におけるクルーズ客船事業に焦点を当て、代表事例としてのケース・スタディと、主にサービス・マネジメント論の先行研究によって示された理論的フレームワークに基づいて、同事業部門におけるサービス・マネジメントを成功裏に展開するための船員戦略の要件を仮説として提示することである。本稿では第1に、サービス・マネジメント論の概念を用いて、クルーズ客船におけるサービス・マネジメントの本質を明確にする。第2に、日本の海運企業によるクルーズ客船事業の代表事例として、郵船クルーズ(飛鳥II)を取り上げる。本稿では、海運企業やクルーズ客船の現場におけるインタビュー調査に基づいて、同社のクルーズ客船事業を概観し、同社全体としての船員戦略、船舶の現場におけるサービス・マネジメント、クルーのトレーニングを中心とする現場レベルでの船員戦略を検討する。第3に、上述のケース・スタディと理論的フレームワークに基づいて、クルーズ客船事業のサービス・マネジメントを成功裏に展開するための船員戦略とは何かを帰納的に考察する。その結果、クルーズ客船事業の特異性を踏まえ、以下2点の仮説を提起した。第1に、海運企業が、マンニングの段階において、船員組織における各Divisionの業務特性と、世界レベルで各マンニング・ソースから雇用するクルーのコンピテンシーを適合化すること。これによって、多様性をもつクルーのサービス・デリバリーが円滑に遂行され、サービス品質が高度化する。第2に、海運企業が、継続的雇用と固定配乗をベースとするクルーイングとトレーニングによって、クルーのサービス品質を全社レベルで標準化すること。これによって、サービス・デリバリーの不均質性を克服すると同時に、現場におけるトレーニングを効率的に行うことが可能となり、サービス品質を高度化させることが可能となる。

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