- 著者
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矢内 義顕
- 出版者
- 日本宗教学会
- 雑誌
- 宗教研究 (ISSN:03873293)
- 巻号頁・発行日
- vol.85, no.2, pp.583-606, 2011-09-30
本稿は、西欧の共住修道制の父と言われるヌルシアのベネディクトゥスによる『戒律』と西欧の女子修道制にとって最も基礎的な戒律の一つであるアルルのカエサリウスによる『修道女のための戒律』をとおして、六世紀初頭の修道院・女子修道院における宗教教育を論じる。修道院の生活の中心となるのは、「聖務日課」と呼ばれる共同の祈りと労働だが、この聖務日課を充実するために、二つの戒律は、修道士・修道女が一日の一定時間を「聖なる読書」(lectio divina)にあてるよう定める。それは、世俗の書物ではなく、聖書、教父の著作、修道生活に必要な霊的な書物を読み、瞑想することによって、それらを学ぶことである。それゆえ、この「聖なる読書」の最終的な目的は、修道生活の完成を目指すことにある。そしてこの修道院を、ベネディクトゥスは「主への奉仕の学校」と呼んだが、それは、カエサリウスの女子修道院にもあてはまるであろう。