著者
佐々木 宏幸 齊木 崇人
出版者
芸術工学会
雑誌
芸術工学会誌 (ISSN:13423061)
巻号頁・発行日
no.53, pp.72-79, 2010-09-30

本研究は、1990年代の異なる二つの時点において、ニューアーバニズム理論の目的と基本原則を明文化した文書であるアワニー原則(1991年)とニューアーバニズム憲章(1996年)の比較・考察を通して、ニューアーバニズム理論の特徴と変容を明らかにすることを目的とする。本研究では、まず、ニューアーバニズムの誕生から現在に至るまでの発展の経緯を振り返り、アワニー原則とニューアーバニズム憲章のニューアーバニズム理論における位置づけを確認した。その上で両者の目的と基本原則を比較することによりその共通点と相違点を明確にし、ニューアーバニズム理論の特徴と変容を明らかにすることを試みた。両者の比較の結果、アワニー原則とニューアーバニズム憲章は、歩いて暮らせるコンパクトでミックストユースのネイバフッドを公共交通機関でネットワークすることにより、自然と共存する環境にやさしい都市の創造を目指している点において共通していることが確認された。一方、アワニー原則の5年後に策定されたニューアーバニズム憲章では、社会・経済・文化・政治・環境・空間などの総合的な扱い、都市と自然環境とのバランスある共存、地域から建築までのあらゆるスケールへの対応、公共空間の重視、建物の形態コントロールを重視する開発規定の有用性の認識などの点において、アワニー原則より包括的かつ多角的に進化していることが明らかとなった。これらの分析により、本研究ではニューアーバニズム理論が、総合的なアプローチ、学際的推進団体の存在、多様な居住環境の肯定と既存の都市の重視、公共空間創造の重視、理論と実践手法の一体的取り組みによるプランニングの変革などの点において、多くの意義を持つ都市デザイン・都市計画理論であると結論づけた。そのうえで今後は、ニューアーバニズム理論の実現のための道具としてスマートコードの研究、そして実際に策定されたフォーム・ベースト・コードの検証を通したその有用性の研究を行い、ニューアーバニズムの理論とその実践手法の体系的な探究を行う必要性を認識した。

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編集者: Chuta
2021-12-01 03:22:18 の編集で削除されたか、リンク先が変更された可能性があります。

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