著者
平川 全機
出版者
環境社会学会
雑誌
環境社会学研究
巻号頁・発行日
no.11, pp.160-173, 2005-10-25

市民参加の自然再生事業においては,人びとが長期間事業に向き合わざるをえないという特質上,時間の経過と公共性の問題を考える必要がある。というのは,討議過程においては意見の多様性を維持できても,管理の段階では,ある1つを採用することはそのプロセスにおいて同時に他にある可能性を排除しそれが累積されるからである。担い手は,時間軸の中で可能性の排除と公共性の確保というジレンマを引き受けざるをない。本稿では札幌市豊平川の堤防の法面で自然再生に取り組むホロヒラみどり会議・ホロヒラみどりづくりの会の6年間の活動を取り上げる。ホロヒラみどりづくりの会では自由参加の議論を経て決まったはずの合意を揺るがす事件が2004年に発生した。これを解決する際合意の拘束性と活動の継続性に基づく可能性の排除と手続き主義的な公共性の確保との間に発生するジレンマの問題に直面した。担い手の活動を検討すると,理念からいえぽ厳密ではなかったり忘れたりという営みが含まれていた。それは,一時的にジレンマの中にあって可能性を保障し,担い手を成立させる営みでもあった。しかし,これは再びジレンマの中に回収されてしまう。最終的に選ばれた解決は,ジレンマを覆い隠すような権力性や知識であった。今後,こうしたジレンマを覆い隠していくものを解明していく必要がある。

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