- 著者
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杉田 穏子
- 出版者
- 一般社団法人 日本社会福祉学会
- 雑誌
- 社会福祉学 (ISSN:09110232)
- 巻号頁・発行日
- vol.52, no.2, pp.54-66, 2011
本論文は,障害の個人的経験をもディスアビリティに組み込もうとする社会モデルに立脚し,知的障害のある人の人生の語りを通して,ディスアビリティ経験(社会の側の態度や対応)が彼らの自己評価に与える影響について,共通するパターンを見いだし社会福祉実践への示唆を得ようとするものである。6人の女性の語りからは,学齢期のいじめや本人意思の無視,就労期のつらい仕事や失職といった社会の否定的な態度や対応が否定的な自己評価の積み重ねを招き,閉じこもりにも至るが,福祉サービス選択時に自己選択・決定できる機会の提供という社会の肯定的な態度や対応がなされると肯定的な自己評価に一転し,さらにひとり暮らし支援やアドボカシー役の提供でいっそう自己評価を高めるというパターンが見いだせた.これは,社会福祉実践面では,教育や福祉サービスの場の選択時,事前体験やていねいな聞き取りによる本人意思の関与が最重要であることを示唆している.