- 著者
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クロス ロバート
- 出版者
- 同志社大学
- 雑誌
- 言語文化 (ISSN:13441418)
- 巻号頁・発行日
- vol.14, no.2, pp.209-233, 2012-01
1947年のインド独立後の数十年間、インドにおけるドキュメンタリー映画製作は、ジャワハルラール・ネルー首相の国家建設プロジェクトの代名詞となった。ドキュメンタリー製作者は、製鋼所やダムなど当たり障りのない映画を作り、カースト制度や不可触賤民など議論を呼ぶテーマを避けてきた。その結果、インドにおけるドキュメンタリーは厳しく批判される分野となった。しかしながら、1980年以降、アナンド・パトワルダンらの若い映画製作者が、現代のインド社会が直面する差し迫った社会問題に関心を持つようになった。最近では、新興世代の、その多くがパトワルダンに影響を受けている映画製作者が、カースト制度や不可触賤民などのインドの負の側面を観察することに乗り出した。ラジェシュ・S. ジャラ(1970年生まれ)は、経済大国、現代インドが抱える社会的・文化的問題を調査し報道しようとする、若手監督世代の一人である。ジャラの受賞作品「火葬場の子供たち(2008)」は、インドの最も混雑する火葬場である、マニカーニカガットで死体を火葬させられるヴァラナシのドムのコミュニティの不可触賤民の子供たちの生活を描いている。本稿では、ジャラがどのようにして映画を製作するに至ったのかを考察し、無力なコミュニティについて記録することによって生じる道徳的含意を検討する。