著者
川﨑 惣一
出版者
宮城教育大学
雑誌
宮城教育大学紀要 (ISSN:13461621)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.31-44, 2011

近年、いわゆる環境問題やエネルギー問題が深刻さを増していることと相まって、さまざまな学問分野において、人間と自然との関わりを問い直す研究が実践されている。本論の目的は、シェリング、レーヴィット、メルロ=ポンティのそれぞれが展開している、近現代ヨーロッパの哲学における自然哲学の三つのアプローチをとりあげて検討することで、人間と自然との関わりを哲学的に分析していくにあたって、どのような観点をとるのがふさわしいかを考察することである。人間は自然の一部であるが、同時に、自然を超越した存り方をしてもいる。これによって人間は自然を対象化することができるが、同時に自然から疎外されてもいる。こうした根本的な事態を踏まえつつ、人間と自然との関わりに関する哲学的考察を深めていくためには、人間と自然との同一性を前提したり、人間に対する自然の自立性を強調したりすることは、ふさわしいことではない。人間が人間独自の存在構造を解明したうえで、自然との関わりに関する考察を進めることが必要となる。これによって、「自然」という言葉でわれわれが何を理解するのがふさわしいか、という問いに関する洞察もまた、深まっていくと思われる。

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