著者
別府 恵子
出版者
神戸女学院大学
雑誌
女性学評論 (ISSN:09136630)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.17-35, 1990-03

Carolyn Heilbrunはその著書Toward a Recognition of Androgyny(1973)において、「社会における様々な問題は性の二極分化に起因する。将来わたしたちは、それぞれ個人がその性的役割や行動様式を自由に選択出来るような社会をつくることが必要である」と提言した。それからほぼ20年後の90年代になって、やっとHeibrunが夢みた社会が到来したかに見える。「オジサンOL」とか「ギャル男」が増殖中で、周りの社会も彼らをことさら奇異なる現象とはみなさない。男らしさ、女らしさという既成概念から自由な彼らの生き方は新しいライフ・スタイルとして容認されているかのようである。The Heart Is a Lonely Hunter(1940),The Ballad of the Sad Cafe^^′(1951)などで知られるCarson McCullersは、生の不条理への問いかけを追求した作家である。彼女のグロテスクな作品世界は人間の孤独感、疎外意識を見事に描き出しており、McCullersは実存主義の作家、あるいは南部ゴシックの作家との評価が定着している。本論は、McCullersのいわゆるグロテスクな人間像を、生の不条理、人間の孤独感の顕在化として捉えるのでなく、西洋文明における性の二極分化による文化的奇形と読み解く。そしてMcCullersの創造した"Boy-girl Adolescents"-Mick Kelly,Frankie Addams-に性別、性役割に関する既成概念からの解放を提唱するMcCullersのアンドロジニ的世界、Heilbrunの夢みた未来社会のヴィジョンを見ようとするものである。

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