- 著者
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松田 謙次郎
- 出版者
- 神戸松蔭女子学院大学
- 雑誌
- Theoretical and applied linguistics at Kobe Shoin : トークス (ISSN:13434535)
- 巻号頁・発行日
- vol.15, pp.37-48, 2012-03-21
松田(2011) では総務省の「法令データ提供システム」のデータを使用して、法令に含まれるサ変動詞の活用に、五段活用と上一段活用それぞれへのゆれがあることを報告した。そこではゆれの存在は確認できたが、法令の制定年による分布では一貫した変化の傾向は見られず、共時的データの限界という問題が残った。本論文では、データとして「法情報総合サービス現行法規・履歴検索版」を採用し、2001 年から2011 年までの全法令の状況を追うことで、サ変動詞の一部がこの10 年間にも大きな変動を示していることを示した。さらにこの反映として、動詞によっては「変異形が使われている全法令」に占める「サ変形のみが使われる法令」の割合が減少しつつあることも確認した。この結果は、(1) サ変動詞の五段化・上一段化が法令においても進行中であり、(2) しかもそれがまったく意識されていない「下からの変化(Labov1966)」である、(3) 改廃や新法制定を含む法令データの変化動向を把握するには制定年による分布を検討するのでは不十分であり、各年の全法令における分布を蓄積して通時的見通しを得るのが望ましい方法であること、を示すものである。