著者
魏 然 陸 一菁
出版者
神戸松蔭女子学院大学
雑誌
神戸松蔭女子学院大学研究紀要. 人間科学部篇 (ISSN:21863849)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.63-79, 2014-03-05

本稿は、中国語圏のジャニーズファン及びジャニーズファンによって形成されるファンコミュニティの実態と特性を明らかにするために、中国語圏最大のジャニーズファンBBS「J家闲情」におけるアンケート調査を行った。その結果、北京、上海など経済水準が高い地域在住の20代の女性というのが中国大陸のジャニーズファンの典型像だといえる。彼女たちは日本国内のファンと比べると、アイドル情報や音楽映像、関連グッズの入手が困難な環境にあるが、それでも様々なルートを通じて、大量のお金を費やしアイドルの応援活動に没入している。応援活動では、特にインターネットの使用が際立つ。また、ジャニーズファンのオンライン匿名コミュニティから、オフ会を行い、お互いに認知できる少人数の特定コミュニティに転化するケースが多く観察される。このようなコミュニティは「ファン同士の集まり」よりも、「同じ趣味をキッカケとした交友関係」であると認識したほうがより妥当だと考えられる。更に、日本のファンコミュニティのキー概念ともいえる「担当制」は中国語圏のジャニーズファンコミュニティにも存在するが、しかし決して日本ほど重要な要素ではないと考えられる。This article outlines a questionnaire survey conducted on the largest fan site of Johnnys in China. It investigated the current situation and characteristics of Johnnys' fans. The survey shows that the majority of Johnnys' fans are women aged 20 to 30 living in prosperous cities such as Beijing and Shanghai. Compared with fans living in Japan, Chinese fans can not access the latest resources and information about Johnnys as conveniently. However, the fans in China invest large amounts of money to support their idols through the internet. Some anonymous fans who get to know each other through the internet even become real-life friends. The "tanto" system which mostly exists in Japanese fan groups of Johnnys also exists in Chinese fan groups, but it can no longer be considered a very important factor.
著者
郡司 隆男
出版者
神戸松蔭女子学院大学
雑誌
Theoretical and applied linguistics at Kobe Shoin : トークス (ISSN:13434535)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.1-12, 2009-03-21

必ずしも言語に関係する分野を専門に勉強するわけではない大学の1、2 年生に生成文法を教える場合に気をつけることをまとめた。科学が共通にもつ特質である、論理的な物の考え方、経験的根拠に基づいた論証の重要性を具体的に解説する必要がある。また、言語は、規則性、再現性、普遍性などの自然界に共通に見られる性質をもつことを強調し、人間の言語としての共通性を認識してもらうようにする。最後に、「生成文法」という考え方が、言語のもつこれらの性質の研究法の一つとして、今のところ成功をおさめていることを示す必要がある。
著者
池谷 知子
出版者
神戸松蔭女子学院大学
雑誌
Theoretical and applied linguistics at Kobe Shoin : トークス (ISSN:13434535)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.11-25, 2012-03-21

本研究では,終助詞「っけ」と「っと」の意味機能を論じるのと同時に,双方の共通点を論じる.この2つは,聞き手が存在する対話として使うことも可能であるが,聞き手が存在しない独話としても使うこともできる.この現象を説明する概念として,聞き手として,invisible listener という目に見えない聞き手を想定した.聞き手を不可視化することによって,聞き手は,話者の発話に何らかのアクションを起こす義務から解放され,そのことによって,おたがいのフェイスを維持することができるのである.さらに,話者の私的領域内に属する情報の中でも「ッケ」は自己(=話者)の体験にある情報であることを示し,「ット」は自己(=話者)の個人的情報であることを示すことを論じた.
著者
松田 謙次郎
出版者
神戸松蔭女子学院大学
雑誌
Theoretical and applied linguistics at Kobe Shoin : トークス (ISSN:13434535)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.37-48, 2012-03-21

松田(2011) では総務省の「法令データ提供システム」のデータを使用して、法令に含まれるサ変動詞の活用に、五段活用と上一段活用それぞれへのゆれがあることを報告した。そこではゆれの存在は確認できたが、法令の制定年による分布では一貫した変化の傾向は見られず、共時的データの限界という問題が残った。本論文では、データとして「法情報総合サービス現行法規・履歴検索版」を採用し、2001 年から2011 年までの全法令の状況を追うことで、サ変動詞の一部がこの10 年間にも大きな変動を示していることを示した。さらにこの反映として、動詞によっては「変異形が使われている全法令」に占める「サ変形のみが使われる法令」の割合が減少しつつあることも確認した。この結果は、(1) サ変動詞の五段化・上一段化が法令においても進行中であり、(2) しかもそれがまったく意識されていない「下からの変化(Labov1966)」である、(3) 改廃や新法制定を含む法令データの変化動向を把握するには制定年による分布を検討するのでは不十分であり、各年の全法令における分布を蓄積して通時的見通しを得るのが望ましい方法であること、を示すものである。
著者
郡司 隆男
出版者
神戸松蔭女子学院大学
雑誌
Theoretical and applied linguistics at Kobe Shoin : トークス (ISSN:13434535)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.1-10, 2012-03-21

本稿では、日本語の「が」と「は」の用法を論じる。従来、これらの接辞が複数の意味用法をもつことが指摘され、それらに対して直感的な特徴付けがなされてきたが、本稿では、形式意味論による記述を提示することを試み、真理条件と前提との区別に基づいて、それぞれの用法の違いを明らかにする。