著者
神崎 正人
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.82, no.1, pp.8-15, 2012-02

1990年頃から胸腔鏡下手術が始まった.当初、VATS=Video-assisted thoracic surgeryで、胸腔鏡補助手術であったが、現在VATSは、Video-assisted thoracoscopic surgeryになっている. 大別すると、1.完全胸腔鏡下手術、2.ポートアクセスVATS、3.小開胸直視併用の従来のVATSとなる.当科では、 1992年より胸腔鏡を導入した.主として肺部分切除には「2;ポートアクセスVATS」、肺亜区域切除以上では「1;完全胸腔鏡下手術」でおこなっている.,VATSでは、視野の展開に制限があり、開胸手術のように、多方向から肺門部を観察し、肺動静脈の分岐パターンを学習・習得する機会がなくなっている.しかし、 VATSは必須の手術手技であり、胸部CTから症例ごとの血管・気管支の走行、分岐を同定し、胸部CTから得られた情報をもとに、仮想の手術を組み立てなくてはならない.,当科では、個々の症例でCT画像から肺の3Dを再構築し、視野制限を補填し、安全なVATSに努めている.3D再構築の手順は、術前に胸部単純CTを肺門から腫瘍まで1mm(以前は2mm)幅で、高分解能CTを最低12cm撮影する.CT画像をDICOMデータに変換し、パーソナルコンピューター(以下PC)で3D画像を作製する.用いるソフトは、フリーソフトのCTTRYとシェアウェアのMetaseqoiaである.作製した3D画像は、着色、切断、変形、接合、透明化などの3Dワークス機能により、切除範囲、手術の手順を明確化でき、術前のシミュレーションが可能となる. PCで作製するので、簡単に持ち運べ、術中ナビゲーションに使用している.3D画像作製過程で、CTの読影、肺の局所解剖の教育的側面があり、PCがあれば3D構築画像の学習が可能である.現在、呼吸器外科手術におけるVATSは様々な疾患に適応され、その手術適応も拡大され、主流となっている.,

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