著者
吉田 倫子 篠原 ひとみ 兒玉 英也 成田 好美 杉山 俊博
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.472-480, 2012-01

味覚センサにより,乳腺炎を発症した母親の母乳の味の変化について検討した。母乳育児中で産後2ヵ月まで乳房トラブルのない母親18人(対照群)と,乳腺炎で外来を受診した産後1年以内の母親14人(乳腺炎群)を対象とした。対象から採取された母乳は,味覚センサ(味認識装量SA-402B)を用い,酸味,塩味,苦味,旨味,渋味の5種類の味覚項目について分析した。対照群の母乳の味は,初乳から成乳への移行に伴い苦味の増加(p<0.01),塩味と旨味の減少(p<0.01,p<0.05)がみられ,成乳となってからは変化がなかった。乳腺炎群は対照群と比較すると旨味の増加(p<0.01)と渋味の低下(p<0.01)が認められた。また,患側の母乳は健側に比べて塩味と旨味が増加(p<0.05,p<0.01)し,酸味が低下(p<0.05)していた。そして,治癒後には苦味と渋味が増加(p<0.01,p<0.05)していた。以上より,乳腺炎時の母乳は塩味や旨味が増加し,酸味や苦味,渋味が低下することが考えられる。乳腺炎群の8割の児に授乳を拒否する行動が観察され,児は鋭敏にこのような味の変化を認知していると推定された。

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