著者
篠原 ひとみ 兒玉 英也 吉田 倫子 成田 好美
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.499-506, 2009-01
被引用文献数
1

乳児期の夜泣きに関して,母親211人に対しアンケート調査を行った。その結果,乳児の母親の18%が夜泣きに直面しており,その中の3割程度が深刻な状況にあると予測できた。夜泣きの開始時期は,生後5〜7ヵ月と生後1ヵ月以内が多かった。夜泣きの開始時期が7ヵ月以降の場合では,夜泣きの継続月数が長引く傾向が認められた。生後3ヵ月以前に開始した夜泣きは,持続時間が長く時間帯が0〜1時のものが多く,一方,4ヵ月以降に開始した夜泣きは,2時以降に多く持続時間は短い傾向がみられた。児の性別,出生体重,授乳方法やさまざまな保育環境に関するパラメーターについて,夜泣きの有無に関連するものはみいだせなかった。一度目覚めるとなかなか寝ない児の割合が夜泣きのある児で有意に高かった(<005)。今回得られた情報は,乳児期における夜泣きへの看護介入の基本情報として,重要と考えられる。
著者
兒玉 英也 篠原 ひとみ 志賀 くに子 渡邊 美奈子
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

妊娠末期の妊婦の定常状態の自律神経活動と妊婦のQOL(睡眠、メンタルヘルス、疲労感)との関係を調査したパイロットスタディの結果、睡眠の満足度と有意な関係が認められた。そこで160例の妊婦を対象とし、睡眠障害と安静時の心拍変動との関係を調査したところ、習慣的にいびきをかく妊婦の自律神経活動は交感神経優位にあると考えられた。64例の妊婦の夜間の動脈血酸素飽和度のモニタリングを行い心拍変動との関係を調査したところ、夜間に重度の低酸素症を経験した妊婦において副交感神経活動の減弱が認められた。妊婦の自律神経活動には潜在的な睡眠時無呼吸の影響が考えられ、看護介入を考慮する場合には考慮する必要がある。
著者
篠原 ひとみ 兒玉 英也 吉田 倫子 成田 好美
出版者
秋田大学
雑誌
秋田大学医学部保健学科紀要 (ISSN:13478664)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.9-15, 2008-10

乳児期の夜泣きに関して母親211人に対しアンケート調査を行い, 児の夜泣き経験をもつとの回答のあった64人を対象として, 本研究では夜泣きの重症度に関わる要因を検討した. 夜泣きの重症度を測る尺度として「一週間の夜泣きの総時間数」を設定した. 夜泣きの重症度は, 平均6.8±10.1時間(0.09〜42.0時間) で, 10時間を越えると, 母親の「寝不足感が常にある」, 「疲労感が常にある」との回答が多くみられた. 夜泣きの重症度は出生体重と関連があり, 10時間を越える児の出生体重は有意に少なかった(p<0.05). また, 10時間を越える児では, 日中に30分以上持続する泣きがみられる頻度の高い傾向があり(p=0.08), 昼寝の回数が有意に少なかった(p<0.01). 本研究から, 夜泣きの重症度が10時間を越える場合は, 何らかの看護介入を考慮する必要があると思われる. 夜泣きの重症度は児の出生体重や日中の睡眠パターンとの関連が認められる.
著者
篠原 ひとみ 兒玉 英也
出版者
秋田大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

乳児の夜泣きへの看護介入方法を探索するために、児の唾液中のメラトニン濃度が睡眠-覚醒リズムの発達の有効な指標となり得るかどうかを明らかにすることを目的に児の唾液中のメラトニン濃度を測定した。そして起床時刻、就寝時刻、最長持続睡眠時間、総睡眠時間、昼寝回数、昼寝時間、保育環境との関係を分析した。対象は生後3-15ヵ月の児(平均7.6±3.2ヵ月)67名(男児36例、女児31例)とその母親である。唾液は母親が1日4回、朝起床時(6時-9時)、昼(11時-13時)、夕方(15時-18時)、夜就寝前(20時-23時)に採取した。67名の唾液中のメラトニン濃度の平均値(SD)は朝起床時40.1(35.3)、昼13.6(21.7)、夕方14.6(24.7)、夜就寝前23.2(28.4)であり、昼や夕に高濃度(10pg/ml)を示す児は生後3-5ヵ月に多く認められた。児の1日の総睡眠時間、最長持続睡眠時間、夜間の覚醒回数、昼寝回数との関係では、昼と夜のメラトニン濃度は昼寝回数と正の相関、昼のメラトニン濃度と最長持続睡眠時間に負の相関、朝のメラトニン濃度と総睡眠時間に負の相関が認められた。また夕と夜のメラトニン濃度は1週間当たりの外気浴日数と負の相関が認められた。生後3-5ヵ月の乳児では昼や夕でもメラトニン濃度が高値を示す例が多く認められたが、月齢と伴にその頻度は減少した。昼のメラトニン濃度が高値の場合昼寝回数が多く、最長持続睡眠時間が短縮する傾向がみられたことから、生後5ヵ月以降、月齢が進んでも日中のメラトニン濃度が高値の場合、睡眠-覚醒リズムの発達の遅れを検討する必要があると考えられる。
著者
吉田 倫子 篠原 ひとみ 兒玉 英也 成田 好美 杉山 俊博
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.472-480, 2012-01

味覚センサにより,乳腺炎を発症した母親の母乳の味の変化について検討した。母乳育児中で産後2ヵ月まで乳房トラブルのない母親18人(対照群)と,乳腺炎で外来を受診した産後1年以内の母親14人(乳腺炎群)を対象とした。対象から採取された母乳は,味覚センサ(味認識装量SA-402B)を用い,酸味,塩味,苦味,旨味,渋味の5種類の味覚項目について分析した。対照群の母乳の味は,初乳から成乳への移行に伴い苦味の増加(p<0.01),塩味と旨味の減少(p<0.01,p<0.05)がみられ,成乳となってからは変化がなかった。乳腺炎群は対照群と比較すると旨味の増加(p<0.01)と渋味の低下(p<0.01)が認められた。また,患側の母乳は健側に比べて塩味と旨味が増加(p<0.05,p<0.01)し,酸味が低下(p<0.05)していた。そして,治癒後には苦味と渋味が増加(p<0.01,p<0.05)していた。以上より,乳腺炎時の母乳は塩味や旨味が増加し,酸味や苦味,渋味が低下することが考えられる。乳腺炎群の8割の児に授乳を拒否する行動が観察され,児は鋭敏にこのような味の変化を認知していると推定された。