- 著者
-
宮本 政子
- 出版者
- 日本母性衛生学会
- 雑誌
- 母性衛生 = Maternal health (ISSN:03881512)
- 巻号頁・発行日
- vol.52, no.4, pp.554-562, 2012-01-01
- 参考文献数
- 14
本研究は妊娠期に生じる抑うつ的な気分が,妊娠経過中の出来事や妊婦が生育過程で得た抑うつスキーマとどのように関連するかを明らかにする目的で,128名の妊婦に調査を行った。そのうち19名はエディンバラ産後うつ病自己調査票(EPDS)の測定値が9点以上の抑うつが疑われる妊婦であった。この19名を高群とし,妊婦全体やEPDS1点以下の低群20名との比較を事例検討も含めて行った。その結果,高群の妊婦には次の特徴がみられた。1.胎児発育が悪く身体的合併症や産科的異常を複合して発症する妊婦や,精神科などの既往歴を有する妊婦が多い,2.抑うつスキーマが低群や妊婦全体に比べて高く,なかでも他者依存的評価得点が高い,3.妊娠期間中に日常生活や家族関係の問題が発生し,負担度の大きな問題が発生した妊婦では抑うつスキーマが低い場合も抑うつ気分が強い。以上の結果から,妊娠期からEPDSを測定し,9点以上の抑うつが疑われる妊婦や上記1に該当する妊婦は抑うつスキーマを測定することが望ましい。そして,妊婦の心身の状態や抑うつスキーマを継続的に把握し,妊娠経過中必要な精神的ケアや生活指導を行い,適切な時期に専門的治療につなげられる支援体制を整える必要がある。