著者
伊佐敷 隆弘
出版者
宮崎大学教育文化学部
雑誌
宮崎大学教育文化学部紀要. 人文科学 (ISSN:13454005)
巻号頁・発行日
no.26, pp.1-21, 2012-03

日本人の「死後の生」に関する考え方を「因果応報」という観点から4つの類型に分ける。 分類の基準は,1死後の因果応報を認めるか否か,2因果応報は個人単位か否か,3因果応報は1回限りか否か,という3点である。また,これら4類型はそれぞれ日本古来の習俗・儒教・仏教・キリスト教からの影響によることを明らかにする。「盆という古来の習俗」に現れている考え方は,因果応報を認めない(善人も悪人も死後は同じ場所へ行く)という点で他の3類型から区別される。「積善の家」ということばに表れているように,儒教においては因果応報が個人ではなく「生命の連続としての家」に生じる(先祖の行為の報いが子孫に生じる)。仏教では(極楽浄土に往生して輪廻しなくなるまで)「六道輪廻」という仕方で因果応報が無限に繰り返される。これに対し,キリスト教では生も死も「最後の審判」も1回限りであるから因果応報も1回限りである。さらに,古来の習俗と儒教において死者と生者の関わりが濃いのに対し,仏教とキリスト教では関わりが希薄である。また,古来の習俗と儒教において死者の魂の個別性がやがて失われるのに対し,仏教とキリスト教では死者の魂は永遠に個別性を失わない。日本人の「死後の生」に関する考え方はこれら4類型が混じりあったものである。

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