- 著者
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田中 みどり
- 出版者
- 佛教大学
- 雑誌
- 京都語文 (ISSN:13424254)
- 巻号頁・発行日
- vol.18, pp.223-251, 2011-11-26
古代のアサガホはカホガハナのうちの、朝に咲くことが特徴である花である。このアサガオには、現在の朝顔、桔梗、槿、昼顔、のあさがおなどの説がある。朝顔は十月十一月に咲くこともある。源氏物語のアサガホは、長月に咲いている例もあるが、つる性の植物で、現代と同じ朝顔と考えてよい。桔梗説について。源氏物語にも枕草子にもキキヤウとアサガホとが出てくるので、この時代には別の植物をさしていたことは明らかである。薬草としてのツルニンジンの根あるいは食用としての若芽をトトキと呼ぶが、古代のキキヤウは、そのトトキの一種でヲカトトキと呼ばれていたものであるだろう。槿説について。ムクゲは和漢朗詠集に「槿」の詩と「あさがほ」の歌とが並べられているが、これは命の短い花ということで並べられたもので、「槿」がアサガホであるのではない。萬葉集のアサガホは朝に咲く花であることが明らかであるので、桔梗、槿、昼顔、のあさがお説は否定される。夕まで咲いている例があるが、朝顔は、早朝つぼみを開いて夕刻まで咲き続けることも、ないわけではない。よって、萬葉集のアサガホも、現代の朝顔と同じ牽牛子である。すなわち、牽牛子は、奈良時代に将来されたものである。アサガホの諸説は、古辞書や和漢朗詠集を文証とするものであるが、古辞書には出典を記してないものが多く、その記述をそのまま信じることができないものもある。また、和漢朗詠集は同じ趣の漢詩と和歌とを並べているものであって、必ずしも同じ風物を集めたものでもないので、注意を要する。