著者
村田 典生
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大学大学院紀要. 文学研究科篇 (ISSN:18833985)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.95-107, 2012-03-01

民間信仰のなかで、ある時期急激に参拝者が増加する現象を流行はやり神がみと呼ぶ。この流行神の近世京都における展開過程を考察する。今回事例として取り上げるのは『月堂見聞集』という随筆に登場する山科妙見である。享保期に流行をみた山科妙見であるが、そこには当時よりさらに二〇〇年以上も前に没した日蓮宗の高僧、日親の名が現れる。そこでまず日親の人物像と功績を抽出し、山科妙見との関連を明確にする。その後山科妙見の流行について検討する。その方法としては当時の随筆や京都府や京都市に残る文書を利用するとともに、妙見参詣路を実際に歩き、また現在は寺院となっている妙見寺やその周辺での聞き書きという方法をとった。そうすることで日親から山科妙見へと続く流行の変化を時系列的に捕捉することができると考える。その結果流行神の祀り上げられる過程とそこにある社寺側の運営戦略や市井の人々の信仰と遊山の関係、さらには流行神の土着化の進行を明らかできたのではないだろうか。

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