著者
三枝 正彦 庄子 貞雄
出版者
日本ペドロジー学会
雑誌
ペドロジスト (ISSN:00314064)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.14-25, 1984-06-30
被引用文献数
1

宮城県南部に分布する蔵王火山灰の分布,堆積状態,年代,一次鉱物組成および強磁性鉱物の化学組成を検討し次の結果を得た。1)蔵王火山灰は年代の新しい順に蔵王a,蔵王b.永野および平沢火山灰に分けられた。蔵王a, b,および永野火山灰の降灰の主軸は火口湖"お釜"の真東にあり,噴出源は"お釜"あるいは"お釜"を中心とする中央蔵王と推定された。2)蔵王a, b火山灰の主体は黒色の未風化粗粒火山灰であり,この他にスコリア,白色火山灰を伴っていた。永野火山灰は風化層と黒色火山灰の固結層(青磐)の互層よりなっていた。これらの中でぱ永野火山灰最下部に位置し,赤色スコリアを伴う第4青磐が最も広く分布し,鍵層として重要であった。3)蔵王a, b火山灰の降下年代は古文書の記録や^<14>C年代からそれぞれ約360年前および1,000年前と推定された。また永野火山灰の鍵層である第2, 4青磐層の降下年代は^<14>C年代や遺物からそれぞれ5,000〜7,000年前および26,000〜32,000年前と推定された。4)蔵王火山灰の重鉱物組成は新旧をとわず,シソ輝石が大半で,この他に普通輝石,火山ガラスおよび強磁性鉱物とごく少量のかんらん石からなっていた。また軽鉱物としては有色ガラスが主体でこの他に斜長石が存在した。一方蔵王火山以外を噴出源とする愛島火山灰の重鉱物組成は普通角閃石,強磁性鉱物を主体とし,軽鉱物としては自型の石英が多量に存在した。5)蔵王火山灰の強磁性鉱物の化学組成はVが多く,Znが少ない。これに対して愛島火山灰ではZnが多く,Vが少なかった。火山灰の岩質を強磁性鉱物のV-Znベルトから判定すると,蔵王火山灰は玄武岩質安山岩,愛島火山灰は流紋岩質であった。

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