著者
三枝 正彦 松山 信彦 阿部 篤郎
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.423-430, 1993-08-05
被引用文献数
7

東北各県より代表的耕地黒ボク土393点を入手し,酸性シュウ酸塩可溶アルミニウムに対するピロリン酸可溶アルミニウムの比,酸性シュウ酸塩可溶ケイ酸含量および粘土含量を用いてアロフェン質黒ボク土と非アロフェン質黒ボク土に類型区分することを試みた.さらに,この結果と前報で報告した交換酸度y_1による開拓地土壌の類型区分結果をペドロジスト懇談会作製の土壌図に作図し,火山灰の分布状況,風化に関係する気候要因,火山灰の岩質,火山ガラスの性質を考慮して東北地方における両黒ボク土の分布と分布面積を検討した.アロフェン質黒ボク土は,全黒ボク土の48%,86万haを占め主として完新世テフラが厚く堆積する地域で,降水量が少ない青森県南東部から岩手県北部にかけて,母材が塩基性の岩質あるいは有色火山ガラスを主体とする岩手山,蔵王山周辺,軽石を含む火山灰降下地域と考えられる秋田県北東部,福島県北部に分布していた.これに対して,非アロフェン質黒ボク土は,全黒ボク土の52%,94万haで年降水量の多い日本海側の各地,高標高地あるいは宮城県の内陸部に,また降水量は相対的に少ないが完新世のテフラの降灰の少ない岩手県南部から宮城県北東部に主として分布していた.東北各県における非アロフェン質黒ボク土の分布割合は青森県30%,秋田県80%,岩手県43%,山形県100%,宮城県76%,福島県42%と推定された.
著者
庄子 貞雄 伊藤 豊彰 中村 茂雄 三枝 正彦
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.473-479, 1987-08-05
被引用文献数
3

ニュージーランド, チリ, エクアドルの代表的火山倍土の腐植の形態と, Al/Fe-腐植複合体について明らかにすることを目的として, 計32断面の火山灰土について弘法・大羽法に準じた腐植の形態分析と選択溶解を行った. 得られた結果を要約すると以下のようである. 1. 腐植層の全炭素含量は平均 (±標準偏差) で, ニュージーランド9.9%, (±4.8), 地理11.0% (±5.4), であり, わが国の火山灰土 (黒ボク土) とほぼ同程度の高い腐植含量であった. 一方, エクアドルは3.6% (±1.5) とわが国より低い値であった. 2. 腐植の形態については, 腐植抽出率およびPQはチリでPQがいくらか低い値であることを除いて, わが国の火山灰土と同程度に高い値を示し, 腐植の大部分が0.5%水酸化ナトリウムで抽出され, その抽出腐植のうち大半が腐植酸であった. 3. ニュージーランド, チリ, エクアドルの火山灰土の腐植層は褐色を呈するものが大部分であり, わが国の火山灰土と著しく異なっていた. 腐食層の土色の黒味は腐植酸型とよく対応しており, 腐植含量の多少にかかわらず黒色を呈する火山灰土はA型腐植酸を主体としていた. 4. ニュージーランドの火山灰土は腐植層が薄く, B型, P型腐植酸を主体としているが, これは過去において長い間森林植生下にあったためと推測された. 5. ニュージーランド, チリ, エクアドルの火山灰土は大部分アロフェン質であるが, 全炭素含量はピロリン酸可溶Alと最も強い正の相関関係を示したが, 酸性シュウ酸塩化可溶Siより近似的に求められるアロフェン含量とは〃腐植の集積には, アロフェン質, 非アロフェン質を問わず, 腐植と複合体を形成しているAl, 次いでFeが重要な役割を果たしていることが明らかとなった.
著者
庄子 貞雄 三枝 正彦 後 藤純
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.264-271, 1986-06-05
被引用文献数
3

本研究は,夏畑作物栽培における下層土の重要性(機能)を明らかにするため,2か年にわたって東北大学農学部川渡農場で実施したものである。試験区は,作土として熟畑化した川渡黒ボク土を,下層土としては強酸性の非アロフェン質黒ボク土(未耕地の川渡黒ボク土と焼石黒ボク土)と弱酸性のアロフェン質黒ボク土(未耕地の蔵王黒ボク土と十和田黒ボク土)を使用した。供試作物には耐旱性が強いが,耐酸性の弱いソルガムを使用し,施肥栽培を行った。なお窒素の行方を追跡するために,重窒素硫酸アンモニウムを使用した。得られた結果は以下のとおりである。1)基肥窒素の土壌中での挙動は,梅雨期の降雨量によって大きく左右された。空梅雨の1982年の場合には,基肥窒素由来の無機態窒素は,下層土へほとんど移動することなく消失したのに対して,梅雨期の降雨量の多かった1983年の場合には,急速に下層土へ移動した。2)ソルガムの根の生育をみると,強酸性下層土区では,作土下で強い酸性障害を受け,下層土への伸長が抑制された。これに対して弱酸性下層土区では,ソルガム根は下層土深くまで伸長した。3)地上部の生育は,1982年の場合はいずれの区でも順調で,下層土の酸性状態の影響が小さかった。これに対して1983年の場合には,酸性下層土区で著しく不良であった。この理由は,初期から梅雨によって,無機態窒素が作土から下層土へ移動したためと,強酸性下層土区では,ソルガムの窒素吸収が著しく減少したことによるとみられる。4)ソルガムによる基肥窒素の利用率は,1982年の場合は42〜49%で,試験区間の差が小さかった。これに対して1983年の場合は,弱酸性下層土区は前年並であったが,強酸性下層土区では11〜18%と著しく低かった(その理由は3)のとおり)。ソルガムの地上部の生育は,基肥窒素の吸収量によって大きく左右された。5)追肥窒素の利用率は,2か年とも大差なく,53〜69%と高い値となった。この理由は,追肥時期のソルガムは養分吸収能が大きくなっていること,また追肥直後に大雨がなかったことによるとみられる。6)作土で無機化される土壌窒素も雨水によって下層土へ移動するため,雨の多かった1983年の場合には,ソルガムはかなりの量の土壌窒素を下層土から吸収していることがうかがわれた。7)本研究ならびに先の著者らの冬作物を供試した研究結果から,下層土は畑作物による水分とともに,窒素(施肥および土壌由来)養分の重要な吸収の場所である。したがって畑作物の生育は下層土の良否に大きく左右されることが明らかとなった。
著者
三枝 正彦 松山 信彦 阿部 篤郎
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.423-430, 1993-08-05 (Released:2017-06-28)
被引用文献数
16

東北各県より代表的耕地黒ボク土393点を入手し,酸性シュウ酸塩可溶アルミニウムに対するピロリン酸可溶アルミニウムの比,酸性シュウ酸塩可溶ケイ酸含量および粘土含量を用いてアロフェン質黒ボク土と非アロフェン質黒ボク土に類型区分することを試みた.さらに,この結果と前報で報告した交換酸度y_1による開拓地土壌の類型区分結果をペドロジスト懇談会作製の土壌図に作図し,火山灰の分布状況,風化に関係する気候要因,火山灰の岩質,火山ガラスの性質を考慮して東北地方における両黒ボク土の分布と分布面積を検討した.アロフェン質黒ボク土は,全黒ボク土の48%,86万haを占め主として完新世テフラが厚く堆積する地域で,降水量が少ない青森県南東部から岩手県北部にかけて,母材が塩基性の岩質あるいは有色火山ガラスを主体とする岩手山,蔵王山周辺,軽石を含む火山灰降下地域と考えられる秋田県北東部,福島県北部に分布していた.これに対して,非アロフェン質黒ボク土は,全黒ボク土の52%,94万haで年降水量の多い日本海側の各地,高標高地あるいは宮城県の内陸部に,また降水量は相対的に少ないが完新世のテフラの降灰の少ない岩手県南部から宮城県北東部に主として分布していた.東北各県における非アロフェン質黒ボク土の分布割合は青森県30%,秋田県80%,岩手県43%,山形県100%,宮城県76%,福島県42%と推定された.
著者
小林 紀子 森岡 幹夫 小宮山 鉄兵 伊藤 豊彰 三枝 正彦
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物学会論文誌 (ISSN:18831648)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.150-154, 2008 (Released:2009-03-03)
参考文献数
18
被引用文献数
3 3

山形県の農家および堆肥製造センターでつくられた家畜ふん堆肥87点 (牛ふん堆肥77点,豚ぷん堆肥6点,鶏ふん堆肥4点) のケイ素含量とその簡易推定法を検討した。1) 牛ふん堆肥のケイ素含量は,12.1~307.8g kg−1乾物 (以下DW),平均が95.4g kg−1DWであった。豚ぷん堆肥のケイ素含量は,9.5~79.6g kg−1DWで平均34.1g kg−1DW,鶏ふん堆肥のケイ素含量は,2.4~36.1g kg−1DWで平均16.8g kg−1DWであった。2) 牛ふん堆肥の炭素含量 (x) とケイ素含量 (y) の間には,y = −0.75x + 354 (r = −0.904) で両者の間に0.1%で有意な負の関係が得られた。また,牛ふん堆肥の灰分含量 (x) とケイ素含量 (y) の間においても,y = 0.44x −39.8(r = 0.970) で0.1%で有意な正の関係が得られた。よって,敷料や副資材に籾殻,わら類,もどし堆肥が使用されている牛ふん堆肥のケイ素含量は,炭素や灰分含量から推定することができると考えられた。
著者
三枝 正彦 小林 紀子 山本 晶子
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.1-7, 2004-02-05 (Released:2017-06-28)
参考文献数
32
被引用文献数
3

田面水のケイ素濃度の変化を,水稲「ひとめぼれ」を栽培した大区画水田で詳細に調べた.実験は,2001,2002年の栽培期間中に宮城県古川農業試験場の沖積土壌で行った.2002年には,田面水のカルシウム,マグネシウム,カリウム,リン濃度についても調べた.得られた結果は以下のとおりである.1)水口の田面水ケイ素濃度は,2002年には,11.8〜13.0mgL^<-1>の範囲を示した.しかし,その濃度は水口からの距離とともに減少し,水尻では0.20〜5.0mgL^<-1>であった.同様の傾向が2001年にも観察された.水尻の田面水ケイ素濃度は,6月初句から下旬にかけて顕著に低下した.しかし,その低下程度は7月にかなり回復した.2)カルシウム,マグネシウム濃度は,水口からの距離に伴って上昇する傾向があった.カルシウム濃度は,水口で6.0〜6.5mgL^<-1>検出され,水口から80m以上離れた地点では,10.3〜17.7mgL^<-1>になった.マグネシウム濃度は,水口で1.8〜2.1mgL^<-1>検出され,カルシウム濃度と同様に,80m以上離れた地点で著しく上昇し,3.0〜5.7mgL^<-1>検出された.3)カリウム及びリン濃度は,一定の変動パターンは示さず,水稲生育時期によって異なる変動を示した.4)ケイ素濃度とカルシウム,マグネシウム濃度の間には,それぞれγ^2=0.923^<***>,γ^2=0.907^<***>と高い負の相関が認められた.
著者
高橋 佳代 鈴木 和美 三枝 正彦
出版者
東北大学
雑誌
複合生態フィールド教育研究センター報告
巻号頁・発行日
vol.22, pp.9-13, 2006-12

中山間地におけるラビットアイブルーベリー栽培について検討した。その結果,ラビットアイブルーベリーは初期生育が緩慢であるものの,成木となる7年目にはハイブッシュブルーベリーよりも樹高は高くなった。また,キャラウェイ,ブライトブルー,ティフブルーは,ハイブッシュブルーベリーに劣らない収量を得た。しかし,ラビットアイブルーベリー全般的に見ると,果実収量性は現在の状態では冬枯れの年があり経済的ではないので,中山間地に導入するには品種を選択する必要がある。一方,いずれの品種も花芽の着生,開花は充分に行われているので,結実を促進するために人工授粉を行ったところ,多くの品種で結実率は向上し,果実収量を上げるのに有効であった。また,緑枝挿しを検討したところ,ラビットアイブルーベリーのいずれの品種においても,ハイブッシュブルーベリーよりも発根率は高く,緑枝挿しによる挿し木繁殖は有用なことが明らかとなった。
著者
山本 理恵 森川 クラウジオ健治 三枝 正彦
出版者
東北大学
雑誌
複合生態フィールド教育研究センター報告
巻号頁・発行日
vol.22, pp.1-4, 2006-12

遺伝子組み換え植物である,グリホサート耐性遺伝子組換えダイズ(Glicine max)(モンサント社のT. MON2)を用いて遺伝子拡散と土壌微生物相への影響について検討した。2004年の圃場試験では非組換えダイズとしてタンレイを用いて距離80cmまで0.115%の確率で,2005年の圃場試験では非組換えダイズとしてタンレイ,スズユタカを用いてタンレイでのみ距離140cmまで0.018%の確率で花粉の飛散による遺伝子拡散が認められた。遺伝子組換えダイズの土壌微生物相への影響は希釈培養法で検討した。細菌一般,糸状菌,放線菌数において非遺伝子組換えダイズと組換えダイズの間で有意な差は認められなかった。
著者
三枝 正彦 庄子 貞雄
出版者
日本ペドロジー学会
雑誌
ペドロジスト (ISSN:00314064)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.14-25, 1984-06-30
被引用文献数
1

宮城県南部に分布する蔵王火山灰の分布,堆積状態,年代,一次鉱物組成および強磁性鉱物の化学組成を検討し次の結果を得た。1)蔵王火山灰は年代の新しい順に蔵王a,蔵王b.永野および平沢火山灰に分けられた。蔵王a, b,および永野火山灰の降灰の主軸は火口湖"お釜"の真東にあり,噴出源は"お釜"あるいは"お釜"を中心とする中央蔵王と推定された。2)蔵王a, b火山灰の主体は黒色の未風化粗粒火山灰であり,この他にスコリア,白色火山灰を伴っていた。永野火山灰は風化層と黒色火山灰の固結層(青磐)の互層よりなっていた。これらの中でぱ永野火山灰最下部に位置し,赤色スコリアを伴う第4青磐が最も広く分布し,鍵層として重要であった。3)蔵王a, b火山灰の降下年代は古文書の記録や^<14>C年代からそれぞれ約360年前および1,000年前と推定された。また永野火山灰の鍵層である第2, 4青磐層の降下年代は^<14>C年代や遺物からそれぞれ5,000〜7,000年前および26,000〜32,000年前と推定された。4)蔵王火山灰の重鉱物組成は新旧をとわず,シソ輝石が大半で,この他に普通輝石,火山ガラスおよび強磁性鉱物とごく少量のかんらん石からなっていた。また軽鉱物としては有色ガラスが主体でこの他に斜長石が存在した。一方蔵王火山以外を噴出源とする愛島火山灰の重鉱物組成は普通角閃石,強磁性鉱物を主体とし,軽鉱物としては自型の石英が多量に存在した。5)蔵王火山灰の強磁性鉱物の化学組成はVが多く,Znが少ない。これに対して愛島火山灰ではZnが多く,Vが少なかった。火山灰の岩質を強磁性鉱物のV-Znベルトから判定すると,蔵王火山灰は玄武岩質安山岩,愛島火山灰は流紋岩質であった。
著者
三枝 正彦 庄子 貞雄
出版者
日本ペドロジー学会
雑誌
ペドロジスト (ISSN:00314064)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.2-16, 1992-06-30

The occurrence of halloysite in Towada Holocene and Pleistocene Tephras was investigated. Formation of halloysite took place in the buried tephras occurring in "Si accumulating zone" where thickness of overburden tephra. deposits were mostly 2 m or greater, and the following forms of halloysite were observed ; spheroidal, elongated spheroidal, twin of spheroidal, chestnut-sheell-like and tubular. Tubular halloysite was dominated in buried A horizon or crack zone of outcrop, whereas spheroidal halloysite was dominated in B, C horizons or noncrack zone of outcrop. The absence of chestnut-shell-like halloysite in Holocene tephras indicate that spheroidal and tubular forms of halloysite were formed concurrently in these tephras. On the other hand, in Pleistocene tephras, the following transformation of halloysite was also suggested ; spheroidal → chestnut-shell-like → tubular. The mean size of spheroidal halloysite in B or C horizon or noncrack zone of outcrop and that of tubular halloysite in all tephras increased with age of tephra. Beside, the mean diameter of spheroidal halloysite in buried A horizon or crack zone of outcrop increased till Takadate tephra, but decreased in Tengutai tephra indicating the depletion of Al supply in this oldest tephra. Results obtained in this study thus indicate that surface weathering of tephra influenced the form and amounts of halloysite formed by geochemical weathering.
著者
佐藤 徳雄 渋谷 暁一 三枝 正彦 阿部 篤郎
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.408-413, 1993-09-05
被引用文献数
5

速効性の硫安を基肥および追肥に用いる慣行栽培を対照区として, 肥効調節型被覆尿素を用いた水稲 (品種チヨホナミ) の全量基肥不耕起栽培 (LP区) を試み, 次の結果を得た. 1) LP区の水稲は生育のごく初期に対照区よりやや劣るものの, 6月初旬以降は草丈, 葉色, 茎数および乾物重のいずれにおいても対照区より優った. 2) 対照区では, 湛水直後に急激な土壌無機態窒素の消失が起こり, 稲体は窒素欠乏状態 (クロロシス) を追肥時期まで示した. これに対してLP区の水稲は, 栽培期間中正常な生育を示した. 3) LP区の玄米収量は, 登熟期が高温・多照で経過した1990年が57.1kg/a, 低温・寡照で経過した1991年が51.2kg/aで, 対照区よりもそれぞれ55%および33%優った. 対照区の低収量の原因は, 施肥窒素が湛水とともに消失し, 主としてm^2当たり穂数が少なくなり, 籾数の確保が不充分であったためと考えられる. 4) LP区の窒素吸収量は, 対照区に比べて分げつ盛期以降は著しく優り, 成熟期には対照区の1.57倍に達した. 施肥窒素の利用率は, 全量基肥区のLPが63.2%, 対照区の基肥硫安が8.5%, 幼穂形成期の追肥硫安が52.8%, 穂揃期の追肥硫安が41.5%であった. 5) 以上の結果から, 水稲の不耕起直播栽培に対する肥効調節型被覆尿素の全量基肥施用効果が大きいことが明らかになった.
著者
三枝 正彦 南條 正巳 鳥山 欽哉 木村 和彦 渡辺 肇
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

肥効調節型肥料の発明は肥料を種子や根と接触施用することを可能にした。この方法では土の介在なしに目的とした肥料成分を直接植物根に供給することが可能であり、肥料の利用効率を飛躍的に向上させ、作物の収量と品質を飛躍的に改善することを明らかにした。またこの方法で、不耕起移植栽培や、不耕起直播栽培、接触施肥シードテープ栽培、スティック肥料茶栽培など収量、品質を低下させることなく、環境負荷を低減する画期的農業システムを開発した。
著者
平内 央紀 三枝 正彦
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.41-46, 2006-02-05
被引用文献数
2

水稲用育苗培土のケイ素供給能の評価法を検討するとともに,ケイ酸資材施用の要否基準を決定するため,36種類の育苗培土を用いて育苗試験を行った. 1)育苗培土の可給態ケイ素量は,リン酸緩衝液法では77〜662mg kg^<-1>,湛水静置法では12〜189mg kg^<-1>,上澄液法は12〜166mg kg^<-1>,酢酸緩衝液法では12〜582mg kg^<-1>と,培土によって大きく異なっていた.育苗培土の可給態ケイ素量と水稲苗のケイ素濃度との相関係数は,リン酸緩衝液法で0.86と最も高かった.なお,リン酸緩衝液法ではリン酸吸収係数が1,500以上とそれ未満の育苗培土を区別することで,より正確な可給態ケイ素の評価が可能となった. 2)酸性化多孔質ケイ酸カルシウム水和物の苗箱施用により,苗の地上部および地下部乾物重が増加する傾向が見られた.リン酸緩衝液法による可給態ケイ素量の少ない育苗培土(100mg kg^<-1>前後)と中庸の育苗培土(400mg kg^<-1>前後)では酸性化多孔質ケイ酸カルシウム水和物の施用によって水稲苗のケイ素濃度が有意に増加した.本試験の結果から,育苗培土の可給態ケイ素量の評価方法は,リン酸緩衝液法が現在用いられている評価法としては最も適していることが明らかとなった.また,育苗培土のリン酸緩衝液法による可給態ケイ素量が,非火山灰土壌を原料とする培土(リン酸吸収係数1,500未満)では200mg kg^<-1>,火山性土壌を原料とする培土(リン酸吸収係数1,500以上)では350mg kg^<-1>未満の場合に,ケイ酸資材を施用することが望ましいと考えられた.