著者
庄子 貞雄 伊藤 豊彰 中村 茂雄 三枝 正彦
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.473-479, 1987-08-05
被引用文献数
3

ニュージーランド, チリ, エクアドルの代表的火山倍土の腐植の形態と, Al/Fe-腐植複合体について明らかにすることを目的として, 計32断面の火山灰土について弘法・大羽法に準じた腐植の形態分析と選択溶解を行った. 得られた結果を要約すると以下のようである. 1. 腐植層の全炭素含量は平均 (±標準偏差) で, ニュージーランド9.9%, (±4.8), 地理11.0% (±5.4), であり, わが国の火山灰土 (黒ボク土) とほぼ同程度の高い腐植含量であった. 一方, エクアドルは3.6% (±1.5) とわが国より低い値であった. 2. 腐植の形態については, 腐植抽出率およびPQはチリでPQがいくらか低い値であることを除いて, わが国の火山灰土と同程度に高い値を示し, 腐植の大部分が0.5%水酸化ナトリウムで抽出され, その抽出腐植のうち大半が腐植酸であった. 3. ニュージーランド, チリ, エクアドルの火山灰土の腐植層は褐色を呈するものが大部分であり, わが国の火山灰土と著しく異なっていた. 腐食層の土色の黒味は腐植酸型とよく対応しており, 腐植含量の多少にかかわらず黒色を呈する火山灰土はA型腐植酸を主体としていた. 4. ニュージーランドの火山灰土は腐植層が薄く, B型, P型腐植酸を主体としているが, これは過去において長い間森林植生下にあったためと推測された. 5. ニュージーランド, チリ, エクアドルの火山灰土は大部分アロフェン質であるが, 全炭素含量はピロリン酸可溶Alと最も強い正の相関関係を示したが, 酸性シュウ酸塩化可溶Siより近似的に求められるアロフェン含量とは〃腐植の集積には, アロフェン質, 非アロフェン質を問わず, 腐植と複合体を形成しているAl, 次いでFeが重要な役割を果たしていることが明らかとなった.
著者
庄子 貞雄 三枝 正彦 後 藤純
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.264-271, 1986-06-05
被引用文献数
3

本研究は,夏畑作物栽培における下層土の重要性(機能)を明らかにするため,2か年にわたって東北大学農学部川渡農場で実施したものである。試験区は,作土として熟畑化した川渡黒ボク土を,下層土としては強酸性の非アロフェン質黒ボク土(未耕地の川渡黒ボク土と焼石黒ボク土)と弱酸性のアロフェン質黒ボク土(未耕地の蔵王黒ボク土と十和田黒ボク土)を使用した。供試作物には耐旱性が強いが,耐酸性の弱いソルガムを使用し,施肥栽培を行った。なお窒素の行方を追跡するために,重窒素硫酸アンモニウムを使用した。得られた結果は以下のとおりである。1)基肥窒素の土壌中での挙動は,梅雨期の降雨量によって大きく左右された。空梅雨の1982年の場合には,基肥窒素由来の無機態窒素は,下層土へほとんど移動することなく消失したのに対して,梅雨期の降雨量の多かった1983年の場合には,急速に下層土へ移動した。2)ソルガムの根の生育をみると,強酸性下層土区では,作土下で強い酸性障害を受け,下層土への伸長が抑制された。これに対して弱酸性下層土区では,ソルガム根は下層土深くまで伸長した。3)地上部の生育は,1982年の場合はいずれの区でも順調で,下層土の酸性状態の影響が小さかった。これに対して1983年の場合には,酸性下層土区で著しく不良であった。この理由は,初期から梅雨によって,無機態窒素が作土から下層土へ移動したためと,強酸性下層土区では,ソルガムの窒素吸収が著しく減少したことによるとみられる。4)ソルガムによる基肥窒素の利用率は,1982年の場合は42〜49%で,試験区間の差が小さかった。これに対して1983年の場合は,弱酸性下層土区は前年並であったが,強酸性下層土区では11〜18%と著しく低かった(その理由は3)のとおり)。ソルガムの地上部の生育は,基肥窒素の吸収量によって大きく左右された。5)追肥窒素の利用率は,2か年とも大差なく,53〜69%と高い値となった。この理由は,追肥時期のソルガムは養分吸収能が大きくなっていること,また追肥直後に大雨がなかったことによるとみられる。6)作土で無機化される土壌窒素も雨水によって下層土へ移動するため,雨の多かった1983年の場合には,ソルガムはかなりの量の土壌窒素を下層土から吸収していることがうかがわれた。7)本研究ならびに先の著者らの冬作物を供試した研究結果から,下層土は畑作物による水分とともに,窒素(施肥および土壌由来)養分の重要な吸収の場所である。したがって畑作物の生育は下層土の良否に大きく左右されることが明らかとなった。
著者
南條 正巳 嚴 澤鎔 庄子 貞雄
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.559-565, 1992-10-05
被引用文献数
4

一般農耕地土壌のリン酸吸収係数に交換性Ca^<2+>、Mg^<2+>などの交換性イオンがどの程度影響するかについて検討した。土壌試料はわが国22道県から収集した灰色低地土、グライ土、黒ボク土、黄色土など119点で活性アルミニウム、鉄の含量と鉄の活性度によって、第1群(Al_o+Fe_o/2<1.5かつFe_o/Fe_d≧0.3)、57点;第2群(Al_o+Fe_o/2<1.5かつFe_o/Fe_d<0.3)、28点;第3群(Al_o+Fe_o/2≧1.5)、34点に区分した。1)第1、2、3群の土壌のリン酸吸収係数に対する交換性Ca^<2+>+Mg^<2+>+Al^<3+>による影響はそれぞれ平均36.4、18.2、-0.5%(それぞれ、最大77.5、67.2、28.9%)であった。これらを交換性Ca^<2+>、Mg^<2+>、Al^<3+>のモル比で配分すると第1群試料では24.3、8.4、3.6%、第2群試料では6.0、2.1、10.1%、第3群試料では0.0、-0.2、-0.3%であった。2)第2群の土壌ではリン酸吸収係数測定時に交換性Al^<3+>がリン酸イオンとモル比約1 : 1の沈澱を形成した。3)第3群の土壌ではDCPD、MAPHは沈澱しにくかった。4)正リン酸法によるリン酸吸収係数、BLAKEMORE法によるリン保持量では測定時のpHが低いのでDCPD、MAPHの生成による影響が小さかった。5)地力保全基本断面調査のコンパクトデータベースを用いて主な農耕地土壌のリン酸吸収係数と交換性Ca^<2+>、Mg^<2+>との関係を調べたところ、グライ土、灰色低地土、褐色低地土、黄色土、褐色森林土などではこれらの間に有意な相関が認められたが、黒ボク土では相関が認められなかった。
著者
三枝 正彦 庄子 貞雄
出版者
日本ペドロジー学会
雑誌
ペドロジスト (ISSN:00314064)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.14-25, 1984-06-30
被引用文献数
1

宮城県南部に分布する蔵王火山灰の分布,堆積状態,年代,一次鉱物組成および強磁性鉱物の化学組成を検討し次の結果を得た。1)蔵王火山灰は年代の新しい順に蔵王a,蔵王b.永野および平沢火山灰に分けられた。蔵王a, b,および永野火山灰の降灰の主軸は火口湖"お釜"の真東にあり,噴出源は"お釜"あるいは"お釜"を中心とする中央蔵王と推定された。2)蔵王a, b火山灰の主体は黒色の未風化粗粒火山灰であり,この他にスコリア,白色火山灰を伴っていた。永野火山灰は風化層と黒色火山灰の固結層(青磐)の互層よりなっていた。これらの中でぱ永野火山灰最下部に位置し,赤色スコリアを伴う第4青磐が最も広く分布し,鍵層として重要であった。3)蔵王a, b火山灰の降下年代は古文書の記録や^<14>C年代からそれぞれ約360年前および1,000年前と推定された。また永野火山灰の鍵層である第2, 4青磐層の降下年代は^<14>C年代や遺物からそれぞれ5,000〜7,000年前および26,000〜32,000年前と推定された。4)蔵王火山灰の重鉱物組成は新旧をとわず,シソ輝石が大半で,この他に普通輝石,火山ガラスおよび強磁性鉱物とごく少量のかんらん石からなっていた。また軽鉱物としては有色ガラスが主体でこの他に斜長石が存在した。一方蔵王火山以外を噴出源とする愛島火山灰の重鉱物組成は普通角閃石,強磁性鉱物を主体とし,軽鉱物としては自型の石英が多量に存在した。5)蔵王火山灰の強磁性鉱物の化学組成はVが多く,Znが少ない。これに対して愛島火山灰ではZnが多く,Vが少なかった。火山灰の岩質を強磁性鉱物のV-Znベルトから判定すると,蔵王火山灰は玄武岩質安山岩,愛島火山灰は流紋岩質であった。
著者
三枝 正彦 庄子 貞雄
出版者
日本ペドロジー学会
雑誌
ペドロジスト (ISSN:00314064)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.2-16, 1992-06-30

The occurrence of halloysite in Towada Holocene and Pleistocene Tephras was investigated. Formation of halloysite took place in the buried tephras occurring in "Si accumulating zone" where thickness of overburden tephra. deposits were mostly 2 m or greater, and the following forms of halloysite were observed ; spheroidal, elongated spheroidal, twin of spheroidal, chestnut-sheell-like and tubular. Tubular halloysite was dominated in buried A horizon or crack zone of outcrop, whereas spheroidal halloysite was dominated in B, C horizons or noncrack zone of outcrop. The absence of chestnut-shell-like halloysite in Holocene tephras indicate that spheroidal and tubular forms of halloysite were formed concurrently in these tephras. On the other hand, in Pleistocene tephras, the following transformation of halloysite was also suggested ; spheroidal → chestnut-shell-like → tubular. The mean size of spheroidal halloysite in B or C horizon or noncrack zone of outcrop and that of tubular halloysite in all tephras increased with age of tephra. Beside, the mean diameter of spheroidal halloysite in buried A horizon or crack zone of outcrop increased till Takadate tephra, but decreased in Tengutai tephra indicating the depletion of Al supply in this oldest tephra. Results obtained in this study thus indicate that surface weathering of tephra influenced the form and amounts of halloysite formed by geochemical weathering.