- 著者
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石崎 博志
- 出版者
- 日本語学会
- 雑誌
- 日本語の研究 (ISSN:13495119)
- 巻号頁・発行日
- vol.7, no.4, pp.15-29, 2011-10
本稿は『琉球入學見聞録』「土音」を分析し、ここに表れた琉球語のカ行ア段音とハ行ア段音の音価、カ行イ段音の口蓋化について考察した。その結果、琉球語の発音を示す音訳漢字の使用傾向から、語によってはカ行ア段音が喉音であったこと、ハ行ア段音は一部の語彙を除いて/p-/音を失い、[hua]或いは[Φa]音であり、一部のカとハは[ha]と[hua]([Φa])という違いで音韻的区別が保たれていると結論づけた。またカ行イ段音は、音韻的にはタ行イ段音と未合流だったものの、ガ行イ段音はカ行イ段よりも先んじて口蓋化が発生していた可能性を指摘した。また、音訳漢字の使用状況の混乱などから、琉球語を記した音訳漢字の基礎方言に琉球からの留学生が学んだと思しき南京官話が反映している可能性を論じた。