- 著者
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西岡 敏
- 出版者
- 日本語学会
- 雑誌
- 日本語の研究 (ISSN:13495119)
- 巻号頁・発行日
- vol.7, no.4, pp.55-68, 2011-10-01
竹富方言の敬語は、他の八重山語諸方言と同様、話題の人物(第三者あるいは聞き手)を立てる素材敬語が敬語動詞ないしは敬語補助動詞によって表され、聞き手に対して丁寧さを示す対者敬語が終助詞(文末詞)によって表される。本稿では、前者のうち、尊敬の補助動詞「トールン」(to:runN、くださる)、謙譲の補助動詞「オイスン」(oisuN、差し上げる)・「ッシャリルン」(Q∫eriruN、申し上げる)に焦点を当て、どのような文脈において使用可となるか、どのような意味の漂白化(すなわち、文法化)の過程にあるかについて論じた。補助動詞「トールン」は恩恵の意味が逓減、補助動詞「ッシャリルン」は発言の意味が残存している。また、後者の対者敬語的終助詞のうち、「ユー」(ju:)と「ナーラ」(na:ra)の使い分けについて示した。いずれも聞き手への丁寧さを示すが、「ユー」は話し手が聞き手との距離を置く表現であり、「ナーラ」は話し手が聞き手と共通の基盤に立っていることを積極的に示す表現である。