著者
小杉 泰
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.85, no.4, pp.905-930, 2012-03-30

イスラームは現在もっとも急速に拡大する世界宗教とされる。一九七〇年代以降のイスラーム復興によって、世俗化の流れが逆転し、人びとの間に「宗教による絆」が再生されるようになった。イスラームでは、具体的な行為規定を伴うシャリーア(天啓の法)を、信徒の日常生活の規範たらしめる。その法は世界的なウンマ(イスラーム共同体)の法であると共に、地域コミュニティを再構築する際の基盤となる。国家の制定法から排除されても、シャリーアはムスリムの信仰行為、家族関係、日常生活、地域社会の活動などにおいて根強く残り、それがイスラーム復興と共に再強化されてきた。共同体的な実践が信仰の発露となることが一般的であり、モスク(礼拝所)がコミュニティの中心となる。共通の現象として(一)聖典クルアーンなどのイスラーム教育、(二)モスク建設と礼拝の奨励、(三)相互扶助などの福祉活動、(四)巡礼の増加、(五)イスラーム銀行の設立などが観察される。

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