- 著者
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鈴木 博人
- 出版者
- 社団法人日本気象学会
- 雑誌
- 天気 (ISSN:05460921)
- 巻号頁・発行日
- vol.59, no.5, pp.333-350, 2012-05-31
本研究では,気象庁と鉄道の日降雪深データを用いて,北海道から山陰にかけての日本海側地域と北海道から中部にかけての太平洋側地域を対象に,再現期間が2年以上の日降雪深の大雪の出現頻度について,経年変化とその要因に関する解析を行った.大雪の出現頻度は,北陸では1950年代から2000年代にかけての減少傾向と,1980年代後半における減少側へのジャンプが有意水準5%で有意である.一方で,他の地域では大雪の出現頻度に有意水準5%で有意なトレンドやジャンプは検出されなかった.また,対象地域全ての冬期平均気温,冬季東アジアモンスーン指標(MOI),および北極振動指標(AOI)には1980年代後半にジャンプがみられ,冬期平均気温は対象地域全てにおいてMOIおよびAOIとの相関が有意水準5%で有意である.これから,冬期平均気温のジャンプにはMOIやAOIのジャンプが関係していると考えられる.大雪の出現頻度は,多くの地域において冬期平均気温,MOI,およびAOIとの相関が有意水準5%で有意である.これらの相関は,北陸で高く,他の地域で相関が低いか,相関がない傾向にあり,この傾向が最も強いのが冬期平均気温である.さらに,大雪が出現した日の日平均気温は,北陸では降水が雪と雨になる割合が50%ずつになる気温をわずかに下回る気温領域に集中する傾向が強く,大雪の出現頻度は気温の変化に敏感に応答すると考えられる.これから,北陸における大雪の出現頻度の減少側へのジャンプには,降水が雪と雨になる割合が50%ずつになる気温と地上の気温が近い地域において,MOIやAOIといった大気循環のジャンプの影響を受けた冬期平均気温の上昇側へのジャンプが大きく影響していると考えられる.